持って生まれたものを生かしながら
周囲との連帯を大切にする教育を実践
理事長 青木 勲 先生
広野 まずは貴校の建学の精神をお聞かせください。
青木 ミッションスクールというのは、その設立母体によってテーマが異なります。われわれマリア会がめざしているのは「マリアとイエスの模倣」です。マリアはどのようにイエスに接し、イエスはマリアの下でどのように愛を学んでいったのか。その成長過程をなぞりながら、一緒に学んでいこうというわけです。
広野 その考えをどのように教育に生かしていらっしゃるのですか。
青木 生徒一人ひとりの個性を尊重しつつ、高い協調性を身につけることを目標にしています。たとえば、本校の制服はフランス儀仗兵のユニフォームを模したものですが、一人ひとり体格は違えど、これを着て全員が整列すると統一感が生まれ、調和のとれた立派な集団となります。このように、個人の持って生まれたものを生かし、かつ人と人との連帯を重んじるところが、本校の特徴だと考えています。
広野 中学段階から、英語のみならずフランス語を必修とするなど、語学教育にも力を入れていますね。
川奈部 はい。中学生は、英語とフランス語のうち、片方を第一外国語、もう片方を第二外国語として選択します。そして、第一外国語を週6時間、第二外国語を週2時間学びます。
青木 英語とフランス語を学ぶメリットは、両者の文化や発想、思考の違いにも触れられるところです。どちらかをマスターすれば、他方も上達しますし、身につけた語学力は多文化社会を生きるうえで、必ず役に立つと思います。
広野 一方で、クラブ活動も盛んですね。
青木 サッカー部、水泳部といった運動系はもとより、文化系の競技かるた部なども全国レベルの実績をおさめています。「健全な精神は健全な身体に宿る」ということばもあるように、勉学のみならず、クラブ活動にも精を出し、心身ともに均整の取れた人間をめざすことは非常に大切だと考えています。
学年の約半数は併設小学校からの内進生
価値観の違いに触れることで寛容性が育つ
広報部長 川奈部 智久 先生
広野 宗教行事にはどのようなものがありますか。
青木 中1はミサに年間5~6回参加します。また、参加は自由ですが、昨年度から毎週火曜日に生徒が参加できるミサの時間を設けました。校外学習で都内の教会めぐりをすることもあります。そのほか、イースターやクリスマスなど、季節の節目にイエスの考え方を示すことで、生徒にはキリスト教という宗教を身近に感じてほしいと思っています。
広野 青木理事長は、マリア会の司祭でいらっしゃるそうですね。
青木 はい。以前は宣教師として30年間ほどブラジルにいました。そこで学んだのは、自分が何かを「する」のではなく、そこにいる人たちと「共にいる」のが重要だということです。教育においても、何かを「教えよう」とするのではなく、生徒と「共にいる」ことがとても大切だと考え、その教訓を日々の指導に生かしています。
広野 異なる価値観を理解するという意味では、併設小を持つ貴校の環境は大きな強みだと感じます。
青木 本校は、1学年約180名のうち、併設小からの内進生が約5割を占めます。入学したてのころは、内進生も中入生も、互いの存在にカルチャーショックを受けるようですが、彼らはすぐに打ち解け、その違いを自然に受け入れています。昔に比べると「他人に自分を開く力」は弱まってきた印象ですが、それでも全体的に寛容でおおらかな生徒が多いのは、この環境によるところが大きいでしょう。せっかく与えられた才能を、自分と自分に近い世界のなかだけで完結させないためにも、他者のために考え、動くことの重要性を、日ごろの学校生活のなかであらためて強調していきたいですね。
伝統的に定評のある医学部進学実績
OBのネットワークが現役生を後押し
サピックス教育事業本部
本部長 広野雅明
広野 2024年春の大学合格実績を拝見すると、卒業生153人のうち、医学部医学科にのべ36名が現役で合格されています。昔から医学部受験に強いことで知られる貴校ですが、その理由はどこにあるのでしょうか。
川奈部 やはり、宗教教育が大きく影響していると思います。医学部を志す生徒に理由を聞くと、「人のためになる仕事をしたいから」という答えが多く返ってきます。キリスト教が尊ぶ「奉仕」という精神からいちばんイメージしやすい職業が医師ということなのでしょう。
青木 高2の職業体験では、同窓会のバックアップの下、病院や研究機関を訪問し、そこで医療従事者として活躍するOBに話を聞く機会を設けています。顔見知りのクラブの先輩から、すでに第一線で働くベテランOBまで、さまざまな人とつながることができる強いネットワークは、生徒たちの心強い支えになっています。
広野 一方、中学入試に目を向けると、貴校の問題は受験生にしっかり考えさせるものが多いですね。
川奈部 はい。記述式の問題をたくさん設けているのが特徴です。国語では作文を書いてもらいますし、算数・理科・社会でも選択問題だけでなく、「なぜその結論になるのか」を説明してもらう問題を出しています。
広野 物事を論理的に考えることができるお子さんを求めていらっしゃることが伝わってきます。最後に、受験生に向けてメッセージをお願いします。

中学ではフランス語・英語のうち片方を第一外国語(週6時間)、他方を第二外国語(週2時間)として選択します
青木 小学校と中学校の違いは何かといえば、他人に依存せず、自主性や自立性を学んでいくところです。本校には、それにふさわしい教育環境がありますし、一人ひとりの持っている良さを見つけ、それを最大限に伸ばしていきたいと考えています。
川奈部 1学年180名という比較的小規模な学校ですから、一人ひとりの才能を発揮しやすく、それを受け入れる寛容な土壌もあります。先行き不透明な時代においては、いかに自分の“カラー”が出せるかが重要だと思います。ぜひ、本校の6年間で自分なりのカラーを見いだし、それを磨いていってほしいですね。

中学ではフランス語・英語のうち片方を第一外国語(週6時間)、他方を第二外国語(週2時間)として選択します