「共創」というコンセプトの下
学び合いを重視した新校舎が完成
校長 幸田 諭昭 先生
広野 昨秋に自習室やラウンジ、特別教室が入った「芸術棟」(新2号館)が完成しました。生徒さんの反応はいかがですか。
幸田 非常に好評です。今回、校舎をリニューアルするに当たってコンセプトに掲げたのは「共創」です。つまり、「みんなが集まって何かを生み出せる場所にしたい」と考えたのです。そのコンセプトを象徴する場所として、新2号館の1階には、昼食やグループワークに利用できるラウンジを設けました。放課後には、中高生が入り交じりながら、自分のノートPCを開いて勉強や話し合いをしていますし、夏休みには、高3生が毎日のように来て、友人と一緒に赤本の問題を解き合う姿が見られました。生徒たちは、この場所を通じて、友人とともに学び合うことの大切さを実感しているようです。
また、2階は美術室や音楽室が並ぶアートエリア、3階は3Dプリンタなどを配置したテクノロジーエリアになっており、通常の授業でも積極的に利用しています。生徒はそれぞれが持つクリエイティビティーを最大限に発揮しています。
広野 現在は「理科棟」(新3号館)のリニューアルが進行中ですね。
幸田 はい。2026年に完成する予定です。新3号館では、これまでアクセスしづらかった5階の図書館を1階に移すほか、地下には学年集会やプレゼンテーションなどに利用できる300名収容の講堂を設けます。また、理科実験室も充実させ、廊下には標本や研究成果などを展示する「サイエンス・ストリート」を設置します。こちらでも「共創」のコンセプトの下、みんなでアイデアを共有しながら、学び合いができる環境を整えていく予定です。
「リベラルアーツ」「探究活動」「国際教育」で
教育目標の達成をさらに加速
新2号館の1階に設けられた約200席あるラウンジ。食事をしたり自習をしたり、生徒たちは思い思いの時間を過ごします
広野 2025年度からは高校募集を停止し、完全中高一貫校となります。その狙いはどこにあるのでしょうか。
幸田 本校が大切にする「知耕実学」の教育をより高い水準で実践していくためには、カリキュラムを3年ごとに区切るのではなく、6か年一貫教育に力を入れることが有効だと判断しました。そこで、わたしたちが6年間で伸ばしたい力を、想いを形にする「想造力」、考えて行動する「考動力」、逆境に打ち克つ「突破力」と定義し、「夢の創造と実現」という教育目標の達成をさらに加速させていきたいと考えています。
広野 具体的な教育内容を教えてください。
幸田 大きな柱の一つが「リベラルアーツ」です。大学で学ぶ専門課程の基礎となる知識や教養、学習姿勢をしっかりと身につけるため、「一中一高ゼミ」を開講しています。これは、教科という枠を超え、興味のある分野を深く掘り下げて考察するためのゼミ形式の講座です。教養講座、専門講座、教科横断型講座、外部コンテストに向けた講座など、さまざまなテーマで年間80ほどの講座があるほか、「こういう講座を開いてほしい」という生徒の要望を受けて開講するものもあります。
二つ目の柱は「探究活動」です。興味のあるテーマについて調べ学習を行う中3の「課題研究発表」がメインの活動ですが、今年はそれに加えて大学訪問を始めました。生徒みずから、将来的に進みたいと考えている分野を専門にする大学の研究室にアポを取り、実際に教授や学生に話を聞いて、考察をまとめるというものです。大学受験までまだ余裕のある中3という時期だからこそ、生徒たちは自分の純粋な興味に従って学部・学科を選んでいます。ここで大事なのが“行きっぱなし”で終わらせないことです。必ずレポートを書かせて、キャリア構築につなげていきます。
広野 それは画期的な取り組みですね。探究活動としてはもちろん、キャリア教育としても高い効果が期待できそうです。
幸田 三つ目の柱が「国際教育」です。現在は高1・2の希望者を対象に、オーストラリアを舞台に短期(2週間)、中期(3か月)、長期(1年間)から選べる留学制度があります。さらにこの夏からは、アメリカ・シアトルの大学寮に滞在し、現地の大学生とのディスカッションや、企業訪問を行う「ブレイクスループログラム in シアトル」(高1・2希望者対象)を開始しました。
今後は、東京農業大学が協定を結ぶ44の海外大学のネットワークを活用しつつ、中高大連携をさらに充実させていく予定です。アフリカや東南アジアなど、中高生としては一般的ではない地域にも協定校がありますから、そうした国の学生と交流する機会をつくることができれば、生徒たちにとって貴重な経験になるのではないかと考えています。
中3全員参加の海外修学旅行を開始
高2では「共創型」の国内修学旅行も
サピックス教育事業本部
本部長 広野雅明
広野 最近は、学外のコンクールや大会でも好成績を収めていらっしゃいますね。
幸田 第67回日本学生科学賞では、生物部の中1生がチャボの卵の研究で東京都最優秀賞に輝き、全国大会では中央審査入選1等に選ばれました。また、同じく生物部の生徒は、モウソウチクの研究で、つくばサイエンスエッジ2024で1位を獲得。7月にシンガポールで行われた世界大会に出場しました。
広野 すばらしい活躍ですね。今後さらに力を入れていきたいこと、変革していきたいことを教えてください。
幸田 2025年度入学生からは、現在中3が行っている「課題研究発表」を高1に移し、より長期的なプロジェクトとして発展させたいと考えています。また、中3の学年行事「北海道自然体験研修」を中1に変更すると同時に、中3全員参加の「海外修学旅行」(シンガポール・マレーシア)を開始。加えて、高2の修学旅行を「共創型国内修学旅行」にリニューアルします。これまでは、沖縄、シンガポールとマレーシア、カナダの3か所から行き先を選択する形でしたが、それを国内に統一し、具体的なコースは生徒のプレゼンによって決めていこうと考えています。
広野 みずから行き先を提案し、その体験を学びに変える新しい修学旅行は、まさに「知耕実学」がめざす姿ですね。さて、2025年度からは2月1日の午前入試を開始されます。
幸田 はい。2月1日午後、2日午後、4日午前という従来の入試日程に、1日午前を加えます。本校を第一志望校とするお子さんにぜひ挑戦していただきたいですね。
広野 2025年度からは併設小学校からの生徒が入学してきますし、学校の雰囲気が大きく変わりそうですね。最後に受験生に向けてメッセージをお願いします。
幸田 本校では、生徒に失敗を経験させることも教育の一つだと考えています。6年間という長いスパンで生徒を見守っていきますので、その間にたくさんの寄り道ができるのも、完全中高一貫校の良さだといえるでしょう。受験生の皆さんには、本校の教育理念や教育内容を十分に理解していただいたうえで、入学を検討してもらえたら幸いです。