失敗を恐れず挑戦できる環境が
生徒の主体性を大きく伸ばす
校長 山本 宏之 先生
広野 多様性の時代といわれますが、併設小学校からの内部進学、中学入試、高校入試とさまざまな入り口から生徒が集う貴校は、まさに多様性を体現する学校といえます。
山本 中等部のコースは、医科ジュニア、東大ジュニアが各2クラス、難関大ジュニアが4クラスの全8クラスです。併設小からの内部進学生約90名と混合で編成しています。初めは、内進生は少しやんちゃで活発な生徒が多いのに対し、中学からの入学生は比較的おとなしい生徒が多い印象です。その両者が混ざり合うことで、お互いにとって良い刺激が生まれています。
広野 併設小の開校から10年がたちます。内部進学生の受け入れが始まる前後で、生徒の雰囲気に変化はありますか。
山本 主体的に考え、行動する生徒が増えてきたと感じます。われわれ教員も、「規律ある進学校」として、ルール順守の大切さを伝える姿勢は変えていませんが、ことあるごとに「失敗してもいい」というメッセージを発信するようにしています。誰かの指示に従うだけでは、真のリーダーシップは養われません。「失敗を恐れず、みずからの頭で考えて動く」。そうした行動を促す工夫を、学校生活のさまざまなシーンにちりばめています。
広野 具体的にはどのような取り組みをしているのですか。
山本 たとえば、体育祭や文化祭といった学校行事は、すべて生徒主体で運営しています。危機管理の観点から教員が助言をすることはありますが、種目決め、ルール設定、パンフレット作りなど、メインの仕事を担うのは生徒たちです。なかでも体育祭の応援披露は盛り上がります。振り付けや後輩の指導、音楽の編成もすべて生徒が行うので、特に思い入れが強いのです。競技の成績とは別に、応援披露だけの点数も競いますが、毎年、優勝したチームは泣いて喜んでいます。
医科・東大・難関大の3コースで
一人ひとりの進路実現をサポート
医科コース長 熊代 淳 先生
広野 中等部から3コース制を導入していますが、それぞれの教育内容について教えてください。
山本 まず、中等部の医科ジュニアコースおよび高等部の医科コースでは、6年間を通じて、医療人となるために必要な心構えをしっかり身につけていきます。たとえば、取手の医師会病院の副院長先生による月1回の「医科講話」では、医療現場の現状をお話しいただきます。先生が繰り返し強調するのは、看護師や薬剤師などの他職種が一丸となって患者に向き合う「チーム医療」の大切さです。「医師だけが治療に携わるわけではない。チームワークを大切にできる人になってほしい」という訴えに、生徒も医師という職業観を新たにするようです。
熊代 医学部受験では、すべての大学で面接試験が課されますが、そこで問われるのは「どのような医師になりたいか」という明確なビジョンです。医科コースでは、「医科講話」に代表される各種講演や病院見学などの機会を設けているので、自分が理想とする医師像を追求するチャンスがたくさんあります。それらの経験は、受験で求められる面接や小論文においても、有利にはたらくと考えています。
広野 医学部受験のノウハウが蓄積されている貴校であれば、試験対策も手厚いでしょうね。
熊代 はい。現役生に有利な入試制度を持つ大学、特定の診療科に強い大学など、ひと口に医学部といっても、学校ごとにさまざまな特色があります。本校には、その特色と生徒の希望進路とをうまくマッチングさせてきた実績があるので、安心して挑戦してほしいと思います。
広野 そのほかのコースについてはいかがですか。
第一線で活躍されている医師を月1回招き、貴重な話を聞く「医科講話」。医師をめざす者としての素養を学びます
山本 東大(ジュニア)コースは、まずは東大という最難関大学を意識して、学力を伸ばしてもらうのが狙いです。キャンパスツアーやゼミ見学など、東大の取り組みや研究環境を身近に知る機会をたくさん用意しています。
難関大(ジュニア)コースは、一般選抜のみならず、総合型選抜や学校推薦型選抜などの多彩な入試を利用して希望進路に進むことを目標にしたコースです。過去には、趣味の鉄道と社会学や都市工学といった学問を掛け合わせたテーマで論文を書き、難関国立大学に合格した生徒もいます。
広野 中学入試の結果を見ると、医科・東大・難関大コースで志望者の学力はあまり差がない印象です。
山本 ご指摘のとおり、コース間で大きな学力差はありません。どの受験生も、自分のやりたいことや進みたい道に合わせてコースを選択しています。
「苦手にさせない」熱心な英語教育
医学論文を英語で精読する授業も
サピックス小学部
教育事業本部 本部長
広野 雅明
広野 中等部の入試科目に英語を取り入れるなど、英語教育にも熱心に取り組まれていますね。
山本 はい。本校では「英語を苦手にさせない」という目標の下、導入時には特に細かいケアを行っています。たとえば、中1からクラスを2分割した少人数でネイティブ教員による英会話授業を行っているほか、外部検定の受検も奨励しています。2023年度の高3生のうち、英検®準1級取得者は20人超で1級取得者も数名います。
熊代 加えて、医科コースの「メディカルサイエンス」の授業では、英語で書かれた医療倫理や医療科学についての論文を、ネイティブ教員と共に精読する時間なども設けています。
広野 早期から専門用語に触れる機会として有意義な取り組みですね。そのほかに特徴的な授業はありますか。
山本 理科では実験を多く実施しています。「自然科学棟」と呼ばれる建物には六つの実験室を備えていて、たとえば、そこで行われるブタの心臓や眼球といった珍しい部位を使った実験に、生徒たちは目を輝かせて取り組んでいます。
広野 小テストや家庭学習も多く課されているのでしょうか。
山本 中1・2の基礎学力期の間は、英数国を中心に、小テストや宿題を多く課しています。そこで学習習慣を確立した後は、徐々に自走できるように、中3・高1で探究活動に取り組みます。そして、自分の適性や興味のある分野を探り、高2・3で進路決定につなげていくという流れです。
広野 しっかり学習する一方で、クラブ活動も盛んですね。
山本 はい。2023年度は陸上部・チアリーダー部・模擬国連同好会が全国大会に出場しました。本校では、活動時間を18時までと決めていますが、限られた練習時間のなかでも着実に結果を残せるのが、生徒たちのすごいところだと思います。
広野 最後に受験生に向けてメッセージをお願いします。
山本 わたしも約50年前は皆さんと同じ中学受験生でした。受験勉強に取り組む過程では、苦しく、つらいことも多いと思います。しかし、その経験が皆さんの役に立つ日が必ずきます。その日を信じて、ぜひがんばってください。
※英検®は、公益財団法人 日本英語検定協会の登録商標です。