受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

母校再訪

(「24年11月号」より転載/24年10月公開)

母校再訪

巣鴨中学校・高等学校

黒田 昌平さん(2024年卒業)
渡部 耕平さん(2024年卒業)

幅広い学びから自分の適性を知り、
やりたいことを見つけられる6年間

 1910年に設立された巣鴨中学校・高等学校は、私塾「巣園学舎」を前身に持つ伝統ある男子校です。創立以来、生徒が自分で努力する姿勢を重視し、最先端の国際教育プログラムを展開する同校では、どのような取り組みが行われているのでしょうか。現在、東京大学に通う卒業生のお二人に、それぞれの中高生活の思い出や印象的な出来事について語っていただきました。

自分の難病を特別視せず
行事に参加させてくれた学校に感謝

黒田 昌平さん東京大学理科一類1年好きな数学を、大学でもさらに追究しています。急速に変化する時代のなかにあって、自分自身に正直であることを大切にして、知識を深めていこうと思います。

―この学校を志望した理由について教えてください。

渡部 わたしはウルリッヒ病と呼ばれる難病を持っていることから、中学受験にあたっては、「バリアフリーに対応した施設かどうか」「先生方が病気のことを理解してくださるかどうか」を条件に受験校を絞っていきました。巣鴨を見学した際、先生方に非常に温かく迎えていただいたこともあり、「この学校ならいろいろなことにチャレンジできそうだ」と感じ、受験を決めました。

黒田 父の友人から「中学受験をするなら巣鴨はどうか」と勧められたのがきっかけです。文化祭や説明会に参加するなかで、「大菩薩峠越え強歩大会」や「巣園流水泳学校」など、巣鴨を象徴するハードな行事に興味を持つと同時に、自分も楽しめそうだと思い、志望しました。

―巣鴨で学んで印象に残っていることは何ですか。

黒田 すばらしい数学の先生と出会えたことです。正解を導くことよりも、抽象的な概念をどう理解するかにフォーカスした授業は非常に新鮮で、数学の本質的なおもしろさを知ることができました。その先生のアドバイスで、雑誌『大学への数学』のコンテストに応募し、全国1位をとったことは良い思い出です。数学に対する自信にもつながりました。

渡部 大学受験に必要かどうかにかかわらず、さまざまな科目に触れられるところです。理科では、物理・化学・生物・地学をひと通り学んだうえで、必要な科目を選ぶことができるので、自分の適性を探るのに役立ちました。

―思い出深い行事について教えてください。

渡部 修学旅行です。「みんなと同じ車両で移動できるように」とわたしを担いでバスに乗せてくださった先生や、身の回りの世話のため親が近くにスタンバイしていても、いつもと同じように接してくれた友人など、さまざまな人に支えられながら参加できたことは今でも感謝しています。

黒田さんは数学の齋藤尊先生と再会しました。思い出話や近況報告をする前に、さっそく数学の難問を解き始める二人

黒田 高2のときに友だちに誘われて参加した「ダブルヒーリックス」です。これは英語で医学を学ぶという巣鴨主催のイベントで、海外から来てくださった先生方から最先端の医療についての話をうかがいます。ほかの私学からも参加者を募るのですが、フランスで生まれて、イギリスに移り住み、今は日本でアメリカの大学をめざしているというトリリンガルと知り合えるなど、海外の先生のみならず、他校生からも大いに刺激をもらいました。巣鴨もさまざまな人と出会えるすばらしい環境ですが、学校の外の広い世界を知るチャンスも用意されていて、自分を客観視する良い機会になりました。

先生のアドバイスで東大受験を決意
優秀な友人の存在がモチベーションに

渡部 耕平さん東京大学理科二類1年
(医学部健康総合科学科)
健康総合科学科は、これまでの自分の経験、活動が生かせる学科です。大学では遺伝学や医療倫理などを学び、これからの医療制度についても向き合っていきます。

―お二人はなぜ東大を受けようと思ったのですか。

渡部 高2の終わりに、進路指導の先生が「東大にこういう制度があるよ」と推薦入試のことを教えてくださったのがきっかけです。わたしはウルリッヒ病を持つ患者の会「ウルリッヒの会」の代表をしており、そこでの活動が、推薦入試の条件に合致するのではないかという提案でした。実際に要項に目を通してみると、まさに自分の活動がアピールできる内容だったので、「せっかくだし、めざしてみよう」と決意しました。

黒田 数学をもっと深いところまで学びたいと考えたときに、先述の数学の先生からいただいた「日本で数学を真面目に勉強したいなら、東大か京大しかない」というアドバイスに感化されました。もともと東大には幼いころから漠然としたあこがれを持っていたのですが、先生のひと言が明確に東大をめざすきっかけになりました。

―東大ではどのようなことを学んでいきたいですか。

渡部 大学では病気へのさまざまなアプローチを学びたいと考えています。患者の会の代表という立場にいると、当事者側の「早く病気を治してほしい」という気持ちと、予算や実験の精度、安全性などの理由から、新薬の開発を慎重に進めざるを得ない研究者側の事情の板挟みになることがよくあります。より専門的な知識を学ぶことで、両者のギャップを解消したいと思っています。

黒田 わたしはさらに数学の知識を深めていきたいと思います。東大には今まで見たことのなかったレベルの秀才がたくさんいて、そういう友人の存在が大きなモチベーションになっています。授業が始まる前に図書館で勉強することも多いのですが、ふとしたときに、あこがれの場所で数学書を読む自分が誇らしく思える瞬間があります。

大畑具弘先生(左)と再会した渡部さんは「入学して大畑先生に出会ったときのインパクトは強烈でした。わたしがみんなに溶け込めるように接してくださり、自然とみんなが手助けしてくれるようになりました」と振り返ります

―将来の目標について聞かせてください。

渡部 病気の当事者でありながらも、現行の医療制度を変革できる人間になりたいと考えています。わたしの場合は、いろいろな人のサポートを受けて幸運にも大学に進学することができましたが、障害を持つ人が生きづらい世の中であることには変わりありません。制度改革が進まない背景には、当事者側がどこかであきらめてしまっていることも大きいと感じます。そこで、今後もさらに積極的な活動を続けていき、同じ病気を持つ患者さんたちに向けて「自分たちだって社会を動かせるんだ」と勇気づけられるような存在になりたいです。

黒田 現時点ではアカデミアの道に進みたいと思っていますが、実際にその夢をかなえるにはさまざまな課題があることも理解しています。自分から数学をあきらめることはまずないと思うので、この先、数学のほうから見放されないかぎりは、精いっぱい努力していきます。

―最後に、受験生に向けてメッセージをお願いします。

黒田 これからはAIの台頭により、勉強の意義がより一層問われる時代になりますが、わたしは、自分の“好き”に正直であることが大事だと思っています。わたしにとっての数学のように、皆さんもこの学校で好きなことを見つけ、追い掛け、夢を実現させてください。

渡部 中学、高校と学齢が上がるにつれて、学ぶ科目が徐々に細分化していきますが、巣鴨は、そのなかから自分の適性を見つけられる場所です。「この勉強だったら続けていきたい」というものを見つけて、自分の進みたい道を究めていってほしいと思います。

《学校のプロフィール》

巣鴨中学校・高等学校

所在地 〒170-0012 東京都豊島区上池袋1-21-1
JR「大塚」駅より徒歩10分、JR、東京メトロ有楽町線ほか「池袋」駅より徒歩15分

TEL 03-3918-5311
H P www.sugamo.ed.jp 別ウィンドウが開きます。

《Information》

学校説明会などの情報はこちらよりご確認ください。

www.sugamo.ed.jp/entrance_student/

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