受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

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2025年度中学受験  サピックス小学部第36期生/親子で歩んだ 受験の軌跡

進学校 海城中学校

壁を越えて強くなった息子

M.Kさん お子さんの名前 Iさん

 息子の受験生活で、一番の正念場は6年の11月、マンスリーテストだっただろう。6年夏までは比較的順調な成績で、所属校舎で上位クラスを維持し、最難関の一つを目指して「視界良好」という状況だった。ところが、比較的苦手としていた国語で、見たことのないような過去最低の偏差値を記録してしまった。四科の成績にも響き、第一志望の学校の姿ははるか遠くへ。
 帰宅後、自己採点結果を前にして、
 「もう嫌だ、もうやりたくない!」
 息子は大泣きしながら、部屋の壁や窓をたたき、地団駄を踏んで、もがき苦しんだ。親として何もしてやれない、これほど無力感を味わう瞬間はなかった。私は苦し紛れに、
 「たかが模擬テストだ。大したことない。あと残り二カ月、本気の本気で取り組んでみろ」と声を絞り出した。もちろん、本音ではない。私も妻も完全に動揺していた。興奮し、憔悴していた息子だったが、その声掛けで少し安心したのか、ベッドでスッと眠りについた。何か吹っ切れたのだと思う。数日後、過去最低を記録したその国語の問題に向き合い、解き直しに取り組む姿があった。本当に立派だったと思う。
 残る二カ月あまり、数々の過去問に取り組んだ。だが正直なところ「ここは大丈夫だろう」と思える学校は案外少なかった。常に不安を抱えたラスト期間だった。SS特訓でライバルたちの後塵を拝し、無言で帰宅した夜もあった。一喜一憂するまい、と心に誓っていたが実情は全くその逆で、サピックスの先生方に電話をし、相談に乗っていただいた。校舎責任者の先生から息子に声をかけてもらって「嬉しかった」と素直に気持ちを吐露したこともあった。先生方には本当に感謝している。
 私たち家族はこの時期「二月に強い」「○○君なら大丈夫だ」と、声をかけ続けた。本音をいえば、それくらいしかできなった。どこまで効果があったのかは分からない。結果、一月は三校、二月も二校から合格を勝ち取り、存分に実力を発揮してくれた。
 最後に、進学先となった海城中学で数奇な出来事があった。本番二カ月前、ボロボロの偏差値を出してしまった前述の「11月マンスリーテスト・国語」の物語文で出題された「あの空の色がほしい」(蟹江杏著)と同じ文章が海城中学の国語でも出題されたのだ。一度読んで解き直しに取り組んだ文章は当然理解が早い。普段、信仰心が薄い私も、この事実を知ったとき、「受験の神様」の存在を感じざるを得ない心境になった。いやな出来事、向き合いたくない事実、大人でも逃げ出したくなる場面は多い。息子はひとつ壁を越え、強くなった。この経験は、これからの人生に必ず生きてくるはずだ。大いに期待したい。

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