受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

自慢の授業

専修大学松戸
中学校・高等学校

「理科実験」

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理科4分野とは別に行う「理科実験」
楽しみながら理科的思考を身につける

 専修大学松戸中学校・高等学校は、「社会に貢献できる知性豊かな人材の育成」を教育ビジョンに掲げ、知・徳・体のバランスの取れた指導を実践しています。各教科の授業でも、みずから課題を見つけ、思考力を養う機会を多く取り入れています。今回は、中2の「理科実験」の授業の様子を紹介します。また、理科(化学)担当の國﨑直之先生に、この授業の目的などをお聞きしました。

水溶液の多様な反応を確認して
「ヨウ素デンプン反応」の仕組みを理解

 中学の理科は、物理・化学・生物・地学の分野別の授業を行っていますが、そのほかに中1・2で週に1時間「理科実験」の授業が設けられています。この日の中2の理科実験では、「ヨウ素デンプン反応」をテーマに、水溶液の色の変化を確認し、その仕組みについて理解を深める実験を行いました。

 配られたプリントには、実験の目的や手順がまとめてあり、結果と考察が記入できるようになっています。まずは國﨑先生が、デンプンの構造について図を使いながら説明。デンプンは多糖類と呼ばれ、単糖類であるブドウ糖がつながった構造であることを確認しました。

 ここから、いよいよ実験がスタート。生徒たちは3~4人で一つの班を組み、協力して作業を進めます。各班のテーブルには、6本の試験管が用意されています。「実験1」では、試験管4本に4種類の試料(A:グルコース水溶液、B:コーンスターチ水溶液、C:可溶性デンプン水溶液、D:片栗粉水溶液)を入れ、ヨウ素液を3~5滴たらして、色の変化を見ます。ヨウ素液を入れた試験管を振ると、それぞれ色の変化が表れてきました。Aは少し黄色みがかっています。B・C・Dは青紫から赤紫色に変化しましたが、その色の濃さには差があります。生徒は真剣な表情で試験管を振り、色の変化が表れると、少し安心したような表情を見せました。

 続いて「実験2」では、Cの可溶性デンプン水溶液の半分を空の試験管に移して2本に分け、1本を熱湯が入ったビーカーに入れて温めます。もう1本は比較用としてそのままにしておきます。國﨑先生は「このように比較する実験を『ブランク試験』といいます」と繰り返します。熱湯に入れた試験管の溶液は、徐々に色が消えていき、無色透明になります。らせん構造の中にヨウ素が入り込んでいくことが、ヨウ素デンプン反応の仕組みで、温めるとヨウ素がらせん部分から出ていったり、デンプンのらせん構造が崩れたりすることで色が消失すると解説します。

 「実験3」では、Dの片栗粉水溶液を実験2と同様に2本の試験管に分け、1本に消化酵素を含む胃薬を粉末状にしたものを加えます。この実験でも、もう1本の試験管は比較用です。胃薬を入れた試験管を振ると、溶液の色が薄くなっていきます。消化酵素がデンプンを分解しているのです。ただし、色が変化するのにはある程度の時間を要しました。「胃薬の作用でデンプンのらせん構造が切断されて、ヨウ素が取り込めなくなるのです」と國﨑先生は説明しました。

 最後にプリントの内容を振り返り、重要な事項を再確認しました。そして、実験に使った器具を片付けて授業は終了。先生と生徒との間で活発なやり取りが行われ、楽しそうに実験に取り組んでいる雰囲気が感じられました。終了後には、先生に質問する生徒の姿も多く見られました。

実験での体験が頭に残っていれば
将来学ぶ高度な内容にもつながる

5理科(化学)担当で中2の学年主任の國﨑先生。「実験で生じた疑問を大切にしてほしいと思います。『なぜだろう?』と思ったことを自分で調べる姿勢があれば、興味がどんどん広がっていきます」と話します

 理科実験の授業が始まったのは2012年から。どんな実験を扱うかは基本的に決まっていますが、そのときの各教科の学習内容に応じて変えることも多いそうです。「中2はフィールドワークで稲刈りをしたばかりで、前々回の理科実験では、家庭科とのコラボレーションで『米の炊飯実験』を行いました。そこで、関連するデンプンの実験を思いつきました」と國﨑先生は説明します。ほかの教科や理科の他分野との連携も考えて、内容を決めています。

 同校の理科実験で大切にしているのは、このように自由度を高めて、臨機応変に対応すること、そして、生徒が楽しみながら取り組めるようにすることです。入学してすぐにアンケートを取ると、「理科が嫌い」と答える生徒が8割くらいいた学年なので、少しでも興味を持ってもらえるように、専門的ではなく、身近な事象で実際に体験させることを心がけています。

 「実験で『なぜだろう?』と思わせて、その疑問を自分で調べるきっかけになれば…」と國﨑先生。「失敗することも大切」だと言います。「なぜだろう?」と思うことからスタートして、比較する、データを取る、グラフを描く、考えるという、理科的思考の一連の流れを身につけることが、この授業の大きな目的です。

 また、実験で体験したことが記憶として残っていれば、将来の学習にも必ず役立ちます。今回の実験も、高3で学ぶ高分子分野と関連しています。國﨑先生は、「身近なものを扱って、楽しめる実験にしていますが、実は中学のカリキュラムを超えた難しい内容を一歩踏み込んで先取りしています。実験を通して学んだことを少しでも覚えていれば、高校で出てきたときに『これは前にやったな』と親近感を持つことができます」と話します。

 最後に、國﨑先生は受験生に次のようなメッセージを送りました。「受験勉強は大変ですが、そのなかでも興味や関心を持てることがきっとあるはずです。そのようなことに出合えたら、自分のなかに大事に残しておいてもらいたいと思います。中学に入学したら、興味を持ったことをどんどん調べて、学びを深めていけます」

駒込ピペットを使って、水溶液を試験管に入れます。ガラスの部分をしっかりと押さえるのがポイントです

ヨウ素液をたらした後に、試験管を振って色の変化を観察します。先生が笑顔で見本を見せると、生徒も笑顔で試験管を見つめます

可溶性デンプン水溶液を空の試験管に入れて2本に分けます。同じ量になるように分けるのは、なかなか難しいものです

4 興味を持って取り組んでいる生徒のプリントは、余白や付せんに書き込むほど詳細にまとめられています

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