さぴあ仕事カタログ

東京消防庁 滝野川消防署
消防副士長(救急救命士)
本川 博惟さん
前のページでは、救急救命士の仕事の内容や、なるための方法などを紹介しました。ここでは、東京消防庁滝野川消防署で救急救命士として活躍している本川博惟さんに登場していただきます。どのようなきっかけで救急救命士をめざし、現在はどんな仕事をしているのでしょうか。これまでの道のりや仕事の内容を伺いました。
「人の役に立ちたい」という思いから
救急救命士への道を選ぶ
東京消防庁の滝野川消防署で救急救命士として働く本川博惟さん。まだ小学校の低学年だったころ、ある雪の日に、お母さんが転んで頭から血を流して帰ってきたことがありました。お兄さんたちが動揺しているなか、本川さんはきびきびと対応し、タクシーを呼んでお母さんを病院へ連れていったと言います。「子どものころから漫画『ブラック・ジャック』などを読んでいたので、血に対する耐性があったのかもしれません(笑)。サッカーをしていましたが、プレーヤーとしてボールを蹴るよりも、保護者の方が持っている救急箱に興味がありました」と振り返ります。しかし、このころは救急救命士という仕事はまったく知らなかったそうです。
「人の役に立ちたい」と思い始めたのは、小学6年生のとき。「熊本地震が起こって、震災は怖いなと思いました。そのときにただ逃げるだけでなく、その場で行動できる人になりたいとも漠然と感じていました」と話します。救急救命士の存在を知ったのは高校2年生で、大学進学や就職に関して真剣に考えるようになってからです。救急救命士をめざす意思が固まり、帝京大学医療技術学部スポーツ医療学科救急救命士コースに進学しました。



採用試験を受け東京消防庁に入庁
救急救命士と消防隊員を兼務
大学では、医学や生理学なども含め、実態に即した授業を受けます。3人1組で救急車に乗り、本物の現場と同じ器材を使用して、具合が悪い方に見立てた人形で処置をしたり、ストレッチャーに乗せて搬送したりするなどの流れも学びました。「最も大事なのは迅速さと安全の確立」と本川さんは言います。
就職先としては東京消防庁を志望しました。救急救命士の国家試験と並行して勉強を続け、一般の公務員試験と同様の教養科目などに加えて、身体・体力検査が課せられる東京消防庁の採用試験にも見事に合格を果たしました。
東京消防庁に入庁後は、まず消防学校に入校。消防職員として必要な知識・技術を身につけて半年後に卒業し、滝野川消防署に配属されました。半年間ポンプ隊員として現場で消火・救助活動を行い、その後の1年間は、高度な知識と技能を兼ね備えた隊員で編成される特別消火中隊で活動しました。そして、その後は救急隊員(救急救命士)と消防隊員の兼務が始まります。「昨日は消防隊、今日は救急隊と1日交代だったり、日中は救急隊、夜は消防隊と時間で区切ったりして、それぞれの勤務を行っていました」と、大変だった日々を振り返ります。



現場対応や組織の改善のため
大学院で救急行政を学ぶ
本川さんは東京消防庁に勤務しながら、職場の制度を利用して、帝京大学大学院で救急行政を学ぶことを決意します。コロナ禍で救急隊として活動していたときに、救急車の出勤が増えて、患者の搬送に時間がかかる状況が続いたことから、根本的な解決には行政的なアプローチが必要だと思ったのです。仕事と学業を両立させる生活を2年間続け、今年の3月に帝京大学大学院医療技術学研究科救急救護学専攻の修士課程を修了。将来的には、「東京消防庁内で救急隊員がほかの組織ともよりスムーズに連携できるように、行政の改革を手掛けていきたい」と意欲を燃やします。
本川さんが仕事をするうえで大切にしているのは、一つひとつの仕事の根拠をしっかり意識すること。「そうすると仕事の意義を見いだすことができて、後輩にも自信を持って教えられます」と言います。仕事のやりがいを感じるのは、「無事に救急搬送ができて、お礼を言ってもらえたときですね。消防活動では、日ごろの訓練の成果を実感できたときが特にうれしいです」と笑顔を見せます。
小学生の皆さんには、次のようなメッセージを送ってくれました。「人のために何かをしたいと考えている人は、救急救命士に向いていると思います。自分がやっていることは、絶対に誰かのためになるはずです。小学生の皆さんは、興味や関心があるものには、いろいろな分野に積極的に飛び込んでみてください。社会人になったときに、その経験が生きてきます」
- 「第72回 救急救命士」:
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