さぴあ職場見聞録
京王電鉄株式会社
鉄道事業本部 車両電気部 電力課
菊池 龍さん
前半ページでは、鉄道会社ではさまざまな役割の人が列車の安全かつ正確な運行を支えていることや、沿線のまちづくりなど幅広い仕事があることを紹介しました。ここでは、列車の安全運行や駅の運営に直接かかわる仕事をしている技術系社員の菊池龍さんに、仕事の内容や、やりがいなどをお聞きしました。
京王電鉄株式会社
鉄道事業本部 車両電気部 電力課
菊池 龍さん
Qどんな仕事をしているの?
道路と線路の両方を走行できる作業車で、架線の検査や工事などの作業を行うときに使います。普通の道路を走って現場近くの踏切横などで待機し、終電が通過したらすぐに線路に入って作業できるのがメリット
菊池 わたしは大学院で電気工学を修了した後、技術系の社員として入社し、電力管理所を経て、現在は電力課に所属しています。また、入社して2年3か月後から約2年間は広報部に所属し、広報の仕事も経験しました。
電力管理所では、電車線や変電所といった電力設備のメンテナンスや、トロリー線張り替えなどの修繕工事の発注、施工管理を担当しました。ちなみにトロリー線というのは、パンタグラフ(架線の電流を導き入れるために電車の屋根に取りつけてある装置)を通して給電する接触電線のことです。
電気の点検は、電車の運行がすべて終了してからでないと行えない作業も多いので、終電から始発までの夜間作業もあります。慣れるまでは大変な部分もありますが、夜間作業でしか登場しない、軌道と車道の両方を走れる「陸軌両用作業車」という特殊な車両に乗って、トロリー線などを間近で見て点検するのは、わたしにとっては電気設備の知識・点検技術を効率よく吸収できる機会ともなりました。この電力管理所では後に、電力関連の工事発注や施工管理も担当しました。
現在、所属している電力課では、照明、エレベーターなどの駅設備や電力柱、変電所機器など電力設備の工事発注を行っています。わたしが設計・発注した工事で、駅のホームの照明がすべて新しくなって明るい雰囲気に変わると、仕事の成果が目に見える形でわかるため、モチベーションにつながります。
以上のような仕事をするには専門知識が必要ですが、学校などで学ぶレベルの基礎的な電気の知識があれば、専門知識のほとんどは入社して仕事をしながら得ることができます。
道路と線路の両方を走行できる作業車で、架線の検査や工事などの作業を行うときに使います。普通の道路を走って現場近くの踏切横などで待機し、終電が通過したらすぐに線路に入って作業できるのがメリット
Q仕事で心がけていることは?
菊池 鉄道部門全体に共通していることですが、最優先は安全な鉄道運行を確保することです。そのうえで、鉄道や駅は不特定多数のお客さまが利用されますので、たとえばエレベーターをリニューアルする際は、車いすを利用されているお客さまをどのように案内するかといったことも、事前に駅部門と打ち合わせをしながら、最もお客さまにご迷惑をかけない形をめざして施工を進めます。
Q仕事のやりがいは?
菊池 印象に残っているのは、電力管理所で点検作業をしていたときに経験した、大雪の日の保守業務です。視界不良と極寒のなか、雪の重みで垂れ下がってくる樹木をひたすら伐採したことを覚えています。体力的にはとても大変でしたが、鉄道部門全体で必死に保守を続けた結果、大幅に遅れながらも電車を走らせ続けることができ、達成感を得ました。
❶同じ課のメンバーと工事設計の打ち合わせをする菊池さん。大型モニターに資料を映しながら説明します ❷デスクのパソコンでは、工事にかかる費用を計算する「積算」という仕事や、CADという設計システムを使った設計図の作成、資材の発注などを行います ❸電車線の現場調査をしています。資料を見ながら、更新箇所をしっかり確認 ※社内で仕事をするときはスーツを、現場で点検などをするときは作業着を着用しています
Qなぜ鉄道会社の技術社員になろうと思ったの?
菊池 2012年に完了した調布駅付近連続立体交差事業によって調布・布田・国領の3駅が地下化し、地上の踏切がなくなったことで、それまで分断されていた南北の交通の便が格段に改善されました。当時、大学生だったわたしは、家の最寄り駅が国領駅だったため、まちの利便性が飛躍的に向上したことを肌で感じ、鉄道と駅施設が人々の生活に与えている影響が非常に大きいことを知りました。
京王電鉄では、今後も笹塚駅-仙川駅間の連続立体交差事業や、新宿駅・橋本駅の大規模な駅改良工事を計画しているので、わたしは技術系の立場として、沿線に住む人々の生活を今よりもっと豊かにしていく大きな事業に携わってみたいと思いました。それが、入社の動機です。
しかし、鉄道会社の電気にかかわる部署では、実際にどのような仕事をしているのかまったく想像がつかなかったため、学生向けに行われていたインターンシップに参加しました。わたしは大学と大学院で電気工学を学びましたが、鉄道会社の電気の仕事は大学の講義でも取り扱わないような複雑で専門的な内容もあるため、インターンシップに参加したことで理解が深まったのがよかったです。
Q今後の目標は?
設備更新のための現地調査をするときは、更新する箇所の図面やヘルメット、手を切らないようにするための手袋、LEDライトなどを必ず携帯します
菊池 これまでは、既存の駅の中の設備や、電力設備の一部分を更新する工事にかかわることが多かったので、大規模工事に携わりたいという思いがあります。2012年に調布駅付近連続立体交差事業が完成したとき、自分もそんなふうに、地域の人々の生活を豊かにする事業にかかわりたいと考えました。それを実現し、大きな成果を実感したいと思っています。
鉄道会社では、安全が最優先ですので、安全のためのルールや規則を守ることが大切です。さらに、鉄道は老若男女、多くの人が利用するサービスですから、いろいろな人の立場で物事を考えられる人が、この仕事に向いていると思います。鉄道の仕事に興味を持ってくれた小学生の皆さんは、電車を利用したときに不便だと感じたことや、「こうすればもっと良くなるのに」という考えを、大切に持ち続けてほしいと思います。
設備更新のための現地調査をするときは、更新する箇所の図面やヘルメット、手を切らないようにするための手袋、LEDライトなどを必ず携帯します
- 第35回/鉄道会社:
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