さぴあ職場見聞録
人々の健康志向の高まりにより、おいしいだけでなく、健康促進に役立つ飲食料品が求められるようになりました。そこで今回は、おなかの調子を整えるはたらきを持つ乳酸菌飲料を主力商品とする、株式会社ヤクルト本社(東京都港区)を訪問。どんな仕事があって、どのように製品を作っているのでしょうか。広報室の市川弥寿子さんにお聞きしました。
おいしくて栄養があるのはもちろん
健康に役立つ食品を製造・販売する
❶ヤクルト中央研究所(東京都国立市)では、有用なはたらきをする腸内細菌の可能性をさらに広げる研究などを行っています ❷商品開発部門では、研究の成果を生かしてどんな製品にするかを考え、成分の配合や味などを決めます ❸国内の乳製品工場では、独自の品質管理システムを設け、徹底した衛生管理・品質管理のもとで製造しています ❹「ヤクルトレディ」が家庭や会社に商品を届ける宅配システムは、1963(昭和38)年にスタートしました
乳酸菌飲料から医薬品まで
株式会社ヤクルト本社
広報室 担当課長
市川 弥寿子 さん
ヤクルト本社は、乳酸菌飲料やヨーグルトをはじめとする飲食料品・医薬品・化粧品を製造・販売している会社です。このうち医薬品の分野では、「生菌製剤」といって、ビフィズス菌・乳酸菌製剤の「ヤクルトBL整腸薬」があります。化粧品も乳酸菌由来の保湿成分を配合したスキンケア製品が中心です。ヤクルトは乳酸菌をはじめとする生菌の研究から生まれた製品で、人々の健康で楽しい生活づくりに貢献することを使命として事業を展開しているのです。なお、乳製品の工場は国内に10か所あり、さらに化粧品の工場が神奈川県に、医薬品の工場が静岡県に、研究所が東京都国立市にあります。
研究の成果を商品開発に生かす
現在、「ヤクルト」は、日本を含む世界40の国と地域で販売されています。生きたまま腸に届く「乳酸菌 シロタ株」がとれる「Newヤクルト」、大腸ではたらく「ビフィズス菌 BY株」がとれる「ミルミル」といった乳製品のほか、食後の血糖値が気になる方に適した「ヤクルト蕃爽麗茶」、栄養ドリンクの「タフマン」など、さまざまな健康ニーズに応える製品を多彩に展開しています。なかでも近年、注目されているのが、生きた「乳酸菌 シロタ株」を1mL当たり10億個という高い密度で含む「Yakult1000」「Y1000」といった乳製品乳酸菌飲料。これらは「機能性表示食品」に分類され、毎日続けて飲むと、腸内環境の改善に加え、一時的な精神的ストレスがかかる状況でのストレスを緩和し、睡眠の質向上の機能が期待できます。
こうした製品は、創業時から取り組み続けてきた腸内細菌や有用微生物の基礎研究から生まれました。乳酸菌には未知の部分も多く、今後の研究で、まったく新しい機能が発見されるかもしれません。そうした基礎研究の成果を、人々の健康に役立てるため、ヤクルトでは応用研究の分野でも、いろいろな人が働いています。たとえば、乳酸菌の保存に関する研究をする人、製造技術を向上させる研究をする人など。さらに、どんな製品を作るかなどを考える商品開発職、製品の生産体制を整備する製造技術職、営業職、管理部門の社員などもいます。
わたしは幼いころから食べ物が好きだったので、大学では栄養学を学び、食を扱う会社に就職しました。好きな分野を職業にすると仕事にやりがいが持てるので、小学生の皆さんも興味を持ったことを大切にしてくださいね。
たとえ体に良くても、一般の食品は「おなかの調子を整えます」などといった機能性を表示できません。一方、機能性の表示を許可されているのが、以下の「保健機能食品」です。
ヤクルトの創始者である代田稔博士が、京都帝国大学(現在の京都大学)で微生物の研究を始めたのは1921(大正10)年。当時は衛生状態の悪さから、感染症で命を落とす子どもがたくさんいました。代田博士は、乳酸菌が腸内の悪い菌を減らすはたらきがあることを発見し、その乳酸菌をさらに強化培養することに成功。それが、「乳酸菌 シロタ株」です。
生きたまま腸内に到達し、有用なはたらきをする「乳酸菌 シロタ株」。それを多くの人に摂取してもらおうと考えた代田博士は、有志と共に安価でおいしい乳酸菌飲料として製品化し、1935(昭和10)年に乳酸菌飲料「ヤクルト」を発売したのです。
ヤクルトでは、そんな創始者の考えを「代田イズム」と呼び、現在もすべての事業の原点としています。それは、①病気にならないための「予防医学」が重要だということ、②誰もが手に入れられる価格で製品を販売すること、③栄養素を摂取する器官である腸を丈夫にすることが、人々の健康・長寿につながるとする「健腸長寿」という考え方の3点です。
- 第34回/食品会社:
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