受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあ職場見聞録

さぴあ職場見聞録 第31回/お寺

 文化庁の調べ(2021年、宗教統計調査)によると、日本には約7万7000ものお寺があります。お寺は社会のなかでどのような役割を担い、そこで働く僧侶はどのような仕事をしているのでしょうか。都内の代表的な寺院の一つである築地本願寺(東京都中央区)を訪ね、僧侶で伝道企画部部長の秦明人さんに伺いました。

仏教の各宗派の教えを説き
法要行事や人生の節目の式を執り行う

エキゾチックな外観とは対照的に、伝統的な浄土真宗寺院の形式を受け継いで造られた築地本願寺の本堂内。ご本尊の阿弥陀如来像(あみだにょらいぞう)、宗祖である親鸞聖人の御影、および聖徳太子像などが安置されています

築地本願寺は浄土真宗本願寺派

秦 明人 さん写真浄土真宗本願寺派
築地本願寺
伝道企画部 部長
秦 明人 さん

 小学生の皆さんは、どんなときにお寺を訪れるでしょうか。敷地内の墓地でご先祖さまのお墓参りをするという人もいれば、親戚の結婚式やお葬式に参列したことがある人、初詣や観光で訪れるという人もいるでしょう。お寺は、もともと各宗派の教えを説き、葬祭(人が亡くなったときに行う葬式や、葬式後に行われる法要や法事などのこと)などを行う場です。同時に、古くから地域における教育や福祉、文化の拠点としての役割も担ってきました。

 現在、日本には仏教の大きな宗派が13ありますが、鎌倉時代中期の僧侶である親鸞聖人を宗祖とするのが浄土真宗です。10派に分かれている浄土真宗のなかで、築地本願寺は、京都市の西本願寺を本山とする浄土真宗本願寺派に属しています。

 お寺では、依頼があった方の法事、葬式、結婚式、赤ちゃんが初めてお寺参りをする初参式など、人生の節目の式を執り行います。また、仏教の教えに基づくさまざまな法要行事も実施しています。僧侶は、こうした法要でお経をあげ、参列した一般の人々に対して、仏教に関する話をします。大きな法要では役割分担があり、主催する僧侶のほかに、衣やお香の準備などで法要を下支えする僧侶、雅楽を演奏する僧侶などもいます。

築地本願寺ってどんなお寺?

 日本の伝統的な寺院様式ではなく、インドの仏教寺院の様式を取り入れている築地本願寺。1934(昭和9)年に建立された本堂は、国の重要文化財に指定されています。もともと、江戸時代の初期には浅草横山町にありましたが、1657(明暦3)年の「明暦の大火」で焼失したため、門徒たちが海を埋め立てて新たな“地”を“築”き、現在の場所に移転しました。これは地名の由来にもなっています。
 目的や用事がなくても気軽にお寺に立ち寄ることができるように、境内にはカフェも整備。パイプオルガンのある本堂では、毎月コンサートも行われます。また、震災時には、帰宅困難者を受け入れる一時滞在施設にもなります。

築地本願寺の代表的な法要行事

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お寺で働く僧侶たち

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僧侶の仕事のほかに、会議や打ち合わせ、法要のスケジュール調整や書類作成などの事務作業も行います。近年ではZoomを利用した法要や、法要のYouTube配信も実施しています

僧侶にはお経をあげる以外の仕事も

 築地本願寺では約150人の職員が働いていますが、そのうち半数強が僧侶です。僧侶の仕事というと、仏様の前でお経をあげているイメージが強いですが、お寺の職員でもあるので、広報や情報システムなど、それぞれが担当する仕事を持っています。そのため、時間によっては事務所でパソコンに向かっている僧侶もいますし、一般の方からの問い合わせに電話で答える僧侶もいます。

 築地本願寺の僧侶のほとんどは実家がお寺ですが、一般家庭から僧侶になった人もいます。僧侶になる方法は宗派によって異なり、浄土真宗では所属可能な寺院があることが第一条件です。さらに、僧侶になるための基本教育を受けて資格を取得し、「得度」という僧侶になるための儀式を経る必要があります。

 お寺は、訪れる人みんながほっとできる場所。そんなお寺で働く僧侶が、持っていなければならない心構えは、仏様、そして命を敬う心です。人々に優しさを与える心は、そこから生まれます。お寺を訪れる人々に優しく声を掛け、その心に寄り添う気持ちが、僧侶には何より大切なのです。

第31回/お寺:
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