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「国際安全基準に合致」とIAEA福島第一原発の処理水を海洋放出へ
7月4日から7日まで、国際原子力機関(IAEA)のラファエル・グロッシ事務局長が来日しました。その目的は、東京電力福島第一原子力発電所の処理水を大量の海水で薄めて海に放出する計画について関係者と話し合うことです。まず4日には岸田文雄首相と会談し、放出計画はIAEAが定める国際的な安全基準に合致しているという報告書を公表しました。日本政府はこれを受け、この夏にも計画を実行に移すものとみられます。
2011年の東日本大震災で重大な事故を起こし、現在も廃炉作業が続けられている福島第一原発では、壊れた原子炉建屋に流れ込んだ雨水や地下水などが核燃料などに触れ、放射性物質で汚染された水が発生し続けています。その汚染水から放射性物質を取り除く作業は24時間体制で続けられていますが、どうしても取り除けない放射性の「トリチウム」が残ります。そのため、処理した後の水は福島第一原発の敷地内のタンクにためてきました。
しかし、2024年にはタンクが満杯になると見込まれていたため、政府は2021年、トリチウムを環境や人体に影響がないレベルにまで薄め、IAEAが定める安全基準を満たしたうえで海洋放出することを決めたのです。
トリチウムとは普通の水素の3倍の重さがある「三重水素」のことです。そのような特別な水素からできている水が「トリチウム水」なのです。つまり、水の一部なので、ろ過したり、何かに吸着させたりして取り除くことができません。ただ、トリチウムは自然界にも広く存在しているため、政府は大幅に薄めれば問題ないという立場です。
とはいえ、放射線を出すことは事実なので、トリチウムは危険だと思う人は少なくありません。福島県沖などでとれた水産物は「風評被害」を受け、たとえ安全でも売れなくなる恐れもあるため、地元の漁業者は海洋放出に懸念を示しています。中華人民共和国(中国)も日本を非難しました。大韓民国(韓国)の尹錫悦大統領は一定の理解を示していますが、韓国の野党は強く反発しています。これに対し、日本政府は中国や韓国の原発からもトリチウムは放出されていると反論しました。
加盟国は12か国にイギリスがTPPに加盟
加盟国:①日本 ②ベトナム ③ブルネイ ④マレーシア ⑤シンガポール ⑥オーストラリア ⑦ニュージーランド ⑧カナダ ⑨メキシコ ⑩ペルー ⑪チリ ⑫イギリス
加盟申請国・地域:A中華人民共和国 B台湾 Cコスタリカ Dエクアドル Eウルグアイ Fウクライナ
日本、ベトナム、カナダ、メキシコなど、太平洋を取り巻く11か国から成っていた環太平洋パートナーシップ協定(TPP)は、7月15日・16日に、ニュージーランドの最大都市オークランドで閣僚会合を開き、イギリスの加盟を正式に承認しました。これにより、人口は約5億8000万人、国内総生産(GDP)の合計は全世界の16%ほどになる大きな経済圏ができました。
TPPは、加盟国間で貿易をするときの関税を原則としてなくすとともに、経済活動にかかわるルールも可能な限り共通化しようという取り決めです。もともとはアメリカを含めた12か国で交渉を進めてきて、2015年に大筋合意に達していました。ところが、アメリカのドナルド・トランプ大統領(当時)は、アメリカがTPPに入ると、外国からの安い輸入品を止められなくなって国内の産業に悪影響を与えるとして、2017年1月の就任直後に離脱を表明。残りの11か国は2018年12月、アメリカ抜きでTPPを発効させました。
一方、2020年にヨーロッパ連合(EU)から完全に離脱したイギリスは、その直後の2021年2月、TPPへの加盟を正式に申請しました。太平洋から遠く離れた国ですが、TPP加盟国のうち、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの6か国はイギリスの植民地や自治領だったことがあるため、イギリスがTPPに入っても、さほど不自然ではないともいえます。
このTPPには2021年秋、中国、台湾も加盟を申請しました。中南米のコスタリカ、エクアドル、ウルグアイも申請中で、2023年にはウクライナも申請しています。
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