おしえてピグマはかせ
「ピグマキッズくらぶ」のテキストでおなじみのピグマはかせが、皆さんがふだん疑問に思っていることにお答えします。今回はしっぽのお話です。多くの動物にはしっぽがあるのに、なぜ、わたしたち人間にはないのでしょうか。しっぽはいったいどんな役割を果たしているのでしょうか。
どうして人間にはしっぽがないの?
手足の代わりに使える便利なしっぽ
ネコが塀の上を歩いていたよ。あんな幅の狭いところをよく歩けると思うよ。 | ||
ネコが高くて狭いところを歩けるのは、しっぽでバランスを取っているからだって聞いたことがあるよ。 | ||
歩いたり走ったりするときや、木の上で過ごすときなど、しっぽでバランスを取る動物は多いよ。チーターは走るのが速いよね。しっぽがあるから、曲がるときもスピードを落とさずに走れるんだよ。しっぽが船でいう、かじの役割をするんだ。それから、カンガルーを見てごらん。立っているときは、しっぽを使って体を支えているよ。 | ||
サルの仲間で、しっぽを使って木の枝にぶら下がるものもいるよね。 | ||
クモザルというサルはしっぽを手足のように使って、木から木に伝って移動していくよ。ほかにもしっぽの役割はいろいろあるんだ。 | ||
うちのイヌはうれしいときにしっぽを振るよ。 | ||
ネコはしっぽをピンと上に立てることがあるよね。あれはどういうときなんだろう。 | ||
ネコはご機嫌なときにしっぽを立てるそうだよ。ネコどうしがあいさつするときにもしっぽを立てるよ。そうやって感情を表したり、コミュニケーションを取ったりするときにしっぽを使う動物もいるんだ。 | ||
そういえば牧場に行ったとき、ウシがしっぽを振ってハエを追い払っているのを見たよ。 | ||
しっぽは虫から身を守るときにも使われるよね。また、キツネのようにふさふさした毛の生えたしっぽを持つ動物は、しっぽをからだに巻き付けて寒さから身を守っているよ。 | ||
しっぽって、いらないようにも見えるけど、いろいろ役に立っているのね。 |
二足歩行ならしっぽはいらない?
人間も動物なのに、どうしてしっぽがないのかな。人間に近いサルにもしっぽがあるのに。 | ||
ニホンザルにはしっぽがあるけど、オランウータンやチンパンジーにはないんじゃなかったっけ? | ||
ヒトも含めたサルの仲間を「霊長類」というよね。霊長類のなかでも、特に知能が高く、ヒトに近い形態を持つテナガザル、オランウータン、ゴリラ、チンパンジーは「類人猿」というよ。類人猿にはしっぽがないんだよ。 | ||
どうしてしっぽがないんだろう。 | ||
生き物には「進化」があって、環境に適応して生きられるよう、長い年月をかけて姿かたちや生態が変わってきたんだ。ヒトを含む類人猿の祖先は、進化の過程で、しっぽがいらなくなって、なくなったといわれているよ。 | ||
なくなったってことは、大昔は人間の祖先にもしっぽがあったってことなの? | ||
そうだよ。その証拠がみんなの体にもあるよ。お尻の割れ目の少し上に「尾骨」という骨があって、これがしっぽの名残だといわれているよ。硬い骨だから、触ってみるとわかるよ。実は、赤ちゃんがお母さんのおなかの中にいるとき、ほんの少しの間だけ、しっぽが生えている時期があるんだ。生まれてくるときには完全になくなっているけどね。 | ||
そうなんだ。不思議なものね。 | ||
しっぽを持つイヌやニホンザルは4本足、人間は2本足で立つよね。四足歩行の動物は頭が前にあるので、歩いたり走ったりするとき、後ろにしっぽがあると前後のバランスが取れるんだ。人間のように二足歩行の動物は頭が上にあるから、その必要はないよね。ヒトの祖先は最初は四足歩行でしっぽを持っていたけど、あるときから二足歩行に進化した。それでしっぽがいらなくなって、だんだん小さくなって、なくなったともいわれているよ。 | ||
でも、オランウータンやテナガザルは木の上で生活していて、二足歩行じゃないよね。なのに、しっぽがないんだよね。 | ||
確かにそうだよね。ヒトの祖先がしっぽを失った時期と、二足歩行を始めた時期にはずれがあるともいわれている。二足歩行でしっぽがいらなくなったことが、しっぽをなくした本当の理由かどうかも、実はまだ解明されていないんだよ。 | ||
そうなんだ。もし人間にしっぽがあったら、どうなっていただろうね。 | ||
考えてみると、おもしろいかもしれないね。 |
●霊長類の進化の過程
保護者の方へ
2019年、慶應義塾大学の研究チームが、人間の体に装着できるロボットのしっぽを開発して話題になりました。このしっぽを腰に装着すると、体のバランスが保てて、高齢者などの歩行を助けるだけでなく、重い荷物を持ち上げる作業をする労働者にも有効だといわれます。「もし人間にしっぽがあったら」という想像を膨らませる、おもしろい研究です。 しっぽにかかわる最新の研究としては、2024年2月、アメリカの研究者によって、「しっぽのない類人猿」にはあって、「しっぽがあるサル」にはないDNAが発見されたという発表がありました。これにより、類人猿のしっぽが失われた遺伝的要因が特定できたことになります。
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