おしえてピグマはかせ
「ピグマキッズくらぶ」のテキストでおなじみのピグマはかせが、皆さんがふだん疑問に思っていることにお答えします。今回はお札のお話です。日本では7月3日に新しい紙幣が発行され、そこに描かれる人物も変わります。なぜ日本のお札のデザインには、いつも人物の肖像が使われるのでしょうか。
なぜお札には肖像が使われるの?
人は顔を見分けるのが得意!?
もうすぐ新しいお札が発行されるよね。どんなお札だろう。楽しみだなあ。 | ||
新しい1万円札には渋沢栄一、5千円札には津田梅子、千円札には北里柴三郎の顔が描かれるのよね。 | ||
お札って、いつも、そういう昔の偉い人の顔が描かれているの? | ||
そうだね。日本で最初に人物の顔、つまり肖像入りのお札が発行されたのは1881(明治14)年で、描かれたのは日本の古い歴史書に登場する神功皇后という女性。それ以来、お札のデザインには、ほとんどの場合、歴史上の人物の肖像が使われているよ。菅原道真、二宮尊徳、板垣退助など、今まで17人の人物がお札に登場したよ。いちばん多く使われたのは聖徳太子(厩戸皇子)で、いろいろな金額のお札に7回も登場しているんだ。 | ||
どうしていつも歴史上の人物なの? きれいな景色とか花とか、動物の絵ではだめなの? | ||
これまでに国会議事堂やハト、2000年発行の2千円札には沖縄の首里城守礼門が描かれたこともあるけど、あくまでも例外。表側に大きく描かれるのはやっぱり人物の顔だよ。その最大の理由は、偽物のお札を造りにくくするため。人間は人の顔を見ることに慣れているので、顔つきや表情のちょっとした変化にも気づくんだ。お札の顔がいつもと少しでも違うと「なんか変だな」と気づきやすいんだよ。 | ||
確かに、前髪をちょっと切っただけでも「いつもと違う」って言われることがあるよね。 | ||
顔を見るだけでなんとなく「お母さん、うれしそうだな」なんてわかるしね。それって人間の能力なのね。 | ||
人の顔には細かいしわや微妙な陰影があるから、細部まで正確に偽造するのは難しいんだ。偽札が簡単に造れるとなると、誰もお札を信用しなくなって、毎日の買い物も取り引きも怖くてできなくなる。だから、肖像以外の部分も含めて、お札の印刷には偽造防止のためのいろいろな工夫があるんだよ。 |
お国柄が表れる外国のお札
肖像を使うのは偽造防止のためだけじゃないんだ。お札はみんなが使うものだから、みんなが知っている人物を描いて、親しみを持ってもらうという意味もあるよ。 | ||
外国のお札にも、その国の有名人の顔が使われているの? | ||
そうだね。世界で発行されているお札の約7割に肖像が使われているよ。その国の国王、建国のために尽くした大統領や政治家、軍人、そのほかにも探検家、芸術家、科学者、作家など、国によってさまざまな有名人がお札に登場しているよ。 | ||
日本と同じで、昔の偉い人が使われるのね。 | ||
多くの国ではすでに亡くなった人の肖像を使うけど、国王の場合はそのときの国王の肖像が使われることが多い。イギリスでは一昨年、チャールズ国王が即位したので、その肖像が描かれた新札が今年の6月に登場するよ。今まではエリザベス女王だったんだ。 | ||
世界には肖像を使わないお札もあるの? | ||
あるよ。ヨーロッパ連合(EU)では20か国が「ユーロ」という共通の通貨を使っているけど、ユーロ紙幣には人物は描かれていないよ。代わりに橋や門、窓のある建物などが描かれている。それで国どうしのつながりや開かれた関係性を表しているそうだ。 | ||
いろいろな国の人が使うお札に、どこかの国の人物の肖像が描かれるのも変だしね。 | ||
スイスでも、新しくできた紙幣には人物ではなく、国の文化や科学技術などをイメージした絵が使われているよ。ノルウェーの新札にも、海をテーマにデザインされた絵が描かれているんだ。南アフリカ共和国のお札の表には人物が描かれているけど、裏にはビッグファイブといわれる動物が描かれているよ。 | ||
ビッグファイブって? | ||
アフリカにいるヒョウ、ライオン、サイ、ゾウ、バッファローの5種類の大型野生動物のこと。南アフリカ共和国には5種類の紙幣があって、それぞれにビッグファイブが1種類ずつ迫力たっぷりに描かれているよ。 | ||
カッコいいね。見てみたいな。 | ||
人物もそうだけど、国の自然や歴史、文化、科学技術など、お札にはその国の特徴が表れていておもしろいね。 |
●1946年以降、日本のお札で表側の肖像として登場した人物
※2000年発行の2千円札は、表側で沖縄の首里城守礼門、裏側で源氏物語絵巻と、その作者である紫式部が描かれています。
保護者の方へ
1984年、2004年、そして2024年と、20年ごとに新しくなる紙幣のデザイン。1984年以降で表側の肖像として描かれた人物は、すべて明治時代以降に活躍した人です。理由は、写真が残っている人でなくては困るからだといわれています。肖像をお札に使うには、顔の写真をもとに、印刷用の原板に精巧な彫刻を施していかなくてはなりません。高度な技術を持った工芸官たちが、緻密に手で彫っていくのですが、1ミリの幅に十数本の線を彫るほどだそうです。こうした肖像彫刻技術も、角度によって見え方が変わる3Dホログラムなどの最新技術と共に、世界トップレベルといわれる日本の偽造防止技術の一翼を担っています。
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