受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

おしえてピグマはかせ

サピックスの通信教育・ビグマキッズくらぶ おしえてピグマはかせ

 「ピグマキッズくらぶ」のテキストでおなじみのピグマはかせが、皆さんがふだん疑問に思っていることにお答えします。今回は紙のお話です。ノートや本はもちろん、紙袋・チラシ・ティッシュ・壁紙など生活のさまざまな場面で使われている紙。もともとは、誰がどのようにして作ったのでしょうか。

紙はいつ作られたの?

世界最古の紙は中国製!?

さやかちゃん 漢字を見て思ったんだけど、どうして「紙」は「糸」へんなの? 紙は木で作られるのに。
えりちゃん そういえばそうね。「木」へんでもいいのに。 えりちゃんイラスト
ピグマはかせ 「紙」という字の「糸」は細くて長い糸状のもので、木や草などの植物に含まれている繊維のようなものを表すんだよ。つくりの「氏」には「平ら」という意味があるので、漢字の「紙」は、平らにのばした繊維でできたもの、ということになるよ。実際、紙はもともと、木の皮や草などの繊維を水に溶かして漉いて、薄く平らにのばして作ったものだからね。
げんちゃん 「漉く」ってどういうこと?
ピグマはかせ 水などに溶かした原料を、枠に張った網のようなものですくって広げること。紙や海苔を作るときに使う方法だよ。紙は今でこそ回収した古紙を原料とすることが多いけど、少し前は木を細かく削ったものを使っていた。古紙も元は木材だね。木材で紙を作るようになったのは18世紀のこと。フランスの科学者が木くずから巣を作るスズメバチを見て、「木材で紙が作れるのではないか」と思いついたそうだ。その後、木材を機械ですりつぶして「パルプ」を作る方法が考え出され、紙が大量生産できるようになっていったんだ。でも、紙そのものはもっと昔からあったんだよ。
えりちゃん 紙はいつ、誰が作ったの?
ひかるくん 古代の中国の人だって聞いたことがあるよ。 ひかるくんイラスト
ピグマはかせ 中国の歴史書には、西暦105年に蔡倫という人が紙を作って皇帝に差し上げた、と記されているよ。蔡倫は皇帝に命じられて、書写に適した紙を手軽に製造できる方法を研究して完成させたそうだよ。蔡倫がこのとき使った原料は樹皮や麻のぼろ、魚網など。それを細かくして叩いて、水の中に放って漉き、乾燥させて作ったんだ。
げんちゃん 「書写に適した紙」ということは、紙そのものはその前からあったってことだね。
ピグマはかせ そうなんだ。蔡倫の研究より200年以上前に紙があったのは確かだよ。紀元前100年くらいの遺跡から、文字が書かれた紙がいくつも発見されているからね。今のところ世界最古の紙は、中国西部の放馬灘というところで出土した「放馬灘紙」といわれているよ。これは紀元前150年ごろのものと考えられていて、当時の地図が描かれているんだ。

昔も今も紙はリサイクル

さやかちゃん 日本でいちばん古い紙ってどんなものなの? さやかちゃんイラスト
ピグマはかせ 日本に中国から紙の製造法が伝えられたのは西暦600年ごろのようだよ。今も残っている日本最古の紙といわれているのは、702年に作られた戸籍用紙で、楮という植物で作られたもの。奈良の東大寺にある正倉院に保管されているんだ。当時、紙は貴重だったから、役所の大切な文書やお寺での写経など、使い道は限られていたよ。
さやかちゃん 紫式部も紙に物語を書いていたんでしょ?
ピグマはかせ 『源氏物語』が書かれた平安時代になると、紙は貴族の間で和歌や漢詩などを書くのに使われたんだ。それでも紙は貴重品だから、当時は一度使われた紙の裏を使うことも多かったんだ。両面に書かれた紙の最初に書かれたほうの文書を「紙背文書」または「裏文書」というよ。一度使った紙を漉き直して再利用することもよくあった。漉き直した紙は「漉返紙」といわれ、墨が完全に抜けなくて薄く残っていたから「薄墨紙」とも呼ばれたんだ。
げんちゃん 今と同じだね。チラシの裏をメモ用紙に使うこともあるし、読み終えた新聞や雑誌などは、決められた日にまとめてリサイクルに出すよね。 げんちゃんイラスト
ピグマはかせ 確かにそうだね。紙を一般の人も使うようになったのは江戸時代になってから。農家の副業として紙漉きが各地に広まって、生産量が増えていったんだ。使い道も増えて傘・障子・提灯・浮世絵など、紙製のものが身の回りにあふれるようになったんだ。
えりちゃん 最初は字を書くためのものだったけど、いろいろな目的で使われるようになったのね。
ピグマはかせ ここまでは「和紙」といわれる紙の話だよ。その後、明治時代になって「洋紙」、つまり木材を使って機械で紙を作る方法が伝わってきて、大型の製紙工場で大量生産されるようになったんだ。でも植物の繊維などを原料とする手漉きや機械漉きの「和紙」は、今でも伝統的に各地で作られているよ。

紙を「漉く」ってどういうこと?

鉛筆の字を消しゴムで消す仕組み

保護者の方へ

 紙が登場するまで人々は何に文字を記していたのでしょうか。有名なのはパピルスと羊皮紙です。英語の「paper」の語源にもなっているパピルスは、水草の茎を薄く切って縦横に重ねて平たくしたもの。羊皮紙は羊などの動物の皮から毛を取り除き、表面をなめらかに磨いたものです。中国では、木や竹を薄く短冊状にしてひもでつなげた木簡や竹簡も使われました。これに対し紙は、手近にある材料の繊維を漉いて薄く仕上げるので、書きやすく丸めやすく綴じやすいものです。紙の歴史をひもとくと、人類の文化発展に果たしてきた役割の大きさが感じられます。

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