おしえてピグマはかせ
「ピグマキッズくらぶ」のテキストでおなじみのピグマはかせが、皆さんがふだん疑問に思っていることにお答えします。今回は墨のお話です。イカやタコが吐く墨と、習字で使う墨。まったく違うものではありますが、墨というからには、どこか接点がありそうな気がします。さて、どうでしょうか。
イカやタコが吐く墨はどんなものなの?
墨を吐くのは敵から身を守るため
昨日、お母さんが包丁でイカを切るところを見てたら、おなかから習字の墨みたいな黒い水が出てきてびっくりしちゃった。「墨袋が破れた」ってお母さんは言ってたけど。 | ||
イカには墨をためておく墨袋があるんだよ。 | ||
イカって敵を見つけると、墨を吐いて逃げるんだよね。 | ||
タコも墨を吐くよね。イカの墨とタコの墨って同じなの? | ||
タコも敵に襲われそうになると墨を吐くけど、イカの墨とはちょっと違うんだ。イカの墨は粘り気があるので、吐いた墨はイカのような形になってしばらくは海中に漂うよ。それがイカの分身のように見えるんだ。マグロなどの大きな魚は、イカを餌にしているけど、それに気を取られるようだね。 | ||
その隙にさっと逃げるのね。タコは? | ||
タコの墨は粘り気が少ないから、吐くと海中に煙幕のように広がって、敵の目をくらます効果があるんだ。ウツボなどはタコのにおいを頼りに襲ってくるけど、墨を吐かれると、墨のにおいでタコのにおいが消されて、タコがどこにいるかわからなくなるんだよ。 | ||
イカ墨ってお料理にも使うのよね。イカスミスパゲティってあるもの。 | ||
真っ黒のスパゲティだよね。おいしかったけど、歯や舌が黒くなってびっくりした。そういえば、タコスミスパゲティって聞かないよね。タコの墨はおいしくないのかな。 | ||
アミノ酸などのうまみ成分は、実はイカの墨よりタコの墨のほうに多く含まれていて、タコスミスパゲティもあるにはあるよ。ただ、一気に大量の墨を吐くイカと違って、タコはもともとそんなにたくさんの量の墨を蓄えていないんだ。それに、タコは墨袋が内臓の奥に埋まっていて取り出しにくい。だから、料理にはあまり使われないよ。 |
イカの墨でも習字ができる!?
イカ墨ってお習字の墨に似ているけど、違うものなのよね。 | ||
まったく違うものだよ。習字で使う墨汁は、主に油などを燃やしてできる黒いすすからできているんだ。イカ墨の黒い成分は「メラニン」といって、人間の髪の毛に含まれているのと同じ色素だよ。 | ||
でも、イカ墨も習字に使えそうな気がするね。 | ||
確かに、昔の人はイカ墨で字を書いていたそうだ。ヨーロッパの地中海沿岸地方では、昔からイカがよく捕れたんだ。それで、古代ギリシャの時代からイカを食べるだけでなく、墨をインクや絵の具として使っていたんだよ。 | ||
昔の人も「イカの墨は絵や字をかくのに使える」って思ったのね。 | ||
羽根ペンのようなインクをつけながら使うペンに、イカ墨を原料としたインクが長く使われていたそうだ。名画「モナリザ」を描いたレオナルド・ダ・ヴィンチも、イカ墨のインクを使っていたようだよ。ただ、イカ墨のインクは色あせしやすく、最初は黒っぽくても、時間がたつと茶色っぽい色に変わるんだ。それに粒が粗いから、万年筆に入れるとインクが詰まることもあって、使われなくなっていった。イカ墨のインクはにおいもあるしね。 | ||
もらった手紙からイカのにおいがするのも、なんか変な感じだよね。 | ||
そうだね。みんなは色の名前で「セピア」って知ってるかな。昔のモノクロ写真を見ると、ちょっと茶色みがかった黒っぽい色をしているよね。ああいう色を「セピア」って呼んでいるんだ。実は「セピア」とは、古代ギリシャ語で「コウイカ」という意味。コウイカはイカの一種で、大量の墨を吐くことから「スミイカ」とも呼ばれているよ。 | ||
イカの名前が、色の名前に使われているってことなんだね。 | ||
「セピア」はイカ墨やイカ墨入りのインク、その色を表すことばとして使われるようになっていったんだ。セピアインクは今も少しだけど作られていて、日本でもイカ墨のインクを製造・販売しているところがあるよ。 | ||
わたしも使ってみたいな。 | ||
独特の色合いが気に入って、使っている人もいるよ。イカの墨袋から取り出した天然メラニン色素を使っているから、化学合成の色素にはない魅力があるんだろうね。 |
●イカとタコの墨はどう違う?
保護者の方へ
古代ギリシャ時代から長く使われていたイカ墨のインク。紙が普及していなかった時代には、ヒツジやヤギ、子牛などの皮で作った羊皮紙に、イカ墨で作られたインクと、鳥の羽根でできたペンで文字を書いていました。ちなみに、習字に使う墨汁の原材料はすすと膠(にかわ)でした。膠とは、動物の骨や皮などを煮た液を乾かして固めた物質。古くから画材などにも使われてきました。なお、現在の墨汁は主に「カーボンブラック」から作られます。文具だけを見ても、昔から生活のなかに生物由来のものがさまざまな形で使われてきたことがわかります。
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