おしえてピグマはかせ
「ピグマキッズくらぶ」のテキストでおなじみのピグマはかせが、皆さんがふだん疑問に思っていることにお答えします。今回はカメのお話です。カメのからだの最大の特徴は、硬い甲羅があることです。どうしたらこんなに硬いものがからだにできるのでしょうか。甲羅は何でできているのでしょうか。
カメの甲羅は何でできているの?
甲羅はからだの一部。取り外せない!
池でカメが甲羅干しをしていたけど、こんなに暑くて大丈夫かなあ。 | ||
日なたにずっといるわけじゃなくて、時々、水の中や日陰に入ってからだを冷やしていると思うよ。カメも熱中症になることがあるからね。 | ||
暑いのに重い甲羅を背負って大変。甲羅を取り外して風に当たることはできないのかしら。 | ||
甲羅はからだとくっついているから、ヤドカリの貝みたいに取り外しはできないよ。 | ||
硬い甲羅が軟らかい皮膚とくっついているなんて不思議だなぁ。カメの甲羅ってどんなつくりになっているの? | ||
カメの甲羅は、ろっ骨と背骨がくっついて板のようになったものなんだ。これを「骨甲板」というよ。その表面は「角質甲板」といって、模様のあるうろこのような硬いものでコーティングしているんだ。 | ||
じゃあ、甲羅そのものはろっ骨でできているってことなの? | ||
そうだよ。表面の角質甲板は皮膚が変化したものだけど、骨甲板はろっ骨が板のような形に変形して、筋肉を押しのけて出てきたものなんだ。甲羅は背中側だけでなく腹側にもあって、背中側の甲羅を「背甲」、腹側の甲羅を「腹甲」というよ。 | ||
おなかのほうにも甲羅があるのね。 | ||
カメは敵が来ると、頭や手足を甲羅の中に引っ込めてからだを守ることができるよね。からだ全体が箱みたいな形になっていて、前の窓から頭と前足、後ろの窓から後ろ足としっぽが出る、そういう構造なんだ。頭も手足もろっ骨内に収納できるようになっていて、全部が甲羅にくっついているんだよ。背骨を中心とした骨格を持った動物をセキツイ動物というよね。そのなかで、カメはヘビやトカゲなどと同じハ虫類に分類されるけど、ホ乳類はもちろん、魚類や両生類を含めても、こんなに変わった形をしたものはほかにないよ。 |
2億年も生き続けるのは甲羅のおかげ?
実はカメの甲羅がどうやってできるかはいろいろな説があって、長い間、謎だったんだ。セキツイ動物にはカメ以外にも、ワニやアルマジロのように硬い部分を持つ動物がいるよね。こうした動物の場合、硬い部分はほとんど皮膚の中でつくられるんだ。でも、カメの甲羅は皮膚より下の層の組織でつくられている。皮膚とは関係なく、ろっ骨と背骨がくっついたものだからね。それを理化学研究所という日本の研究機関が解明したんだよ。 | ||
ろっ骨って、あばら骨のことだよね。 | ||
そう。みんなのからだにもあるでしょ。背中の真ん中にある上下に長い背骨から、弓なりに曲がって胸のところまでつながっている骨が、左右12本ずつあるはずだよ。こういう形をつくって、心臓や肺などの臓器を守っているのがろっ骨だよ。カメはこのろっ骨を変形させて内臓を守るだけでなく、いざというときには頭や手足を隠せるくらい大きくしているんだ。 | ||
甲羅がろっ骨だったなんてびっくり。からだの中にあるはずの骨が外に出てきていたんだ。 | ||
カメは肩甲骨もほかの動物とは違う位置にあるよ。みんなも肩の後ろに肩甲骨があるよね。肩甲骨は腕を胴体とつないでいる骨。人間でも鳥などのセキツイ動物でも、ろっ骨の外側にあるよ。でも、カメはほかの動物とは逆で、ろっ骨の内側に肩甲骨があるんだ。なぜカメだけが逆なのかはわからないけれど、進化する過程でそうなっていったようだよ。 | ||
どうしてそんな形になったのかな。 | ||
人間のろっ骨は、弓なりに曲がった棒状の骨が並んでいるから、内側に空間がある。ろっ骨の間の筋肉を動かせば、活発な呼吸運動ができるんだ。でもカメの場合、ろっ骨は板状の甲羅なので自由に動かしにくいから、人間のような呼吸はしにくい。それより、身を守る頑丈なよろいを獲得する道を選んだということなんだろうね。カメは今から2億年以上前、恐竜がいた時代から地球にいたことが、発見された化石からわかっているよ。恐竜は絶滅したけれど、カメはその後も姿を大きく変えることなく生き続けている。それは甲羅があるおかげだともいわれているよ。 | ||
カメはどうして長生きなのかという研究もされているよね。カメってすごいよね。 | ||
カメは不思議なことが多い生き物だよね。 |
●カメはろっ骨が外に出ている!
保護者の方へ
カメの甲羅はどのように形成され、進化してきたのでしょうか。その謎を明らかにしたのが、理化学研究所の研究チームです。カメの卵の中での背甲の発生過程を詳細に観察し、硬い甲羅のようなものを持つほかの動物の発生過程と比較しました。その結果、カメの背甲は皮膚の成分を含んでおらず、ろっ骨が変形して形成されることがわかりました。進化途上のカメの化石からもそのことは立証されました。カメも途中までは、ほかのセキツイ動物と同じ発生過程をたどりますが、ある段階から肩甲骨が内側に入る仕組みができてきます。なぜカメだけがそのような仕組みを獲得したのでしょうか。研究はまだまだ続けられています。
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