おしえてピグマはかせ
「ピグマキッズくらぶ」のテキストでおなじみのピグマはかせが、皆さんがふだん疑問に思っていることにお答えします。今回は深海魚のお話です。海は深くなればなるほど水圧が増します。水深200mを超える深海にすむ魚たちは、どのようにして水圧から自分のからだを守っているのでしょうか。
なぜ深海魚は水圧に耐えられるの?
深海魚のからだにはすき間がない!?
図書館で深海魚の図鑑を借りてきたんだ。変わった顔や形をした魚が多くておもしろいね。 | ||
深海は太陽の光が届かない暗いところ。水温が低く、水圧もとても高いから、浅い海にいる魚は生きていけない厳しい環境なんだ。深海魚はそういう特殊な環境でも生きられるように進化してきたので、からだのつくりがわたしたちがふだん見ている魚とは違うんだよ。 | ||
どのくらい深い海を「深海」っていうの? | ||
一般に深さ200m以上を深海というよ。なかでも6000mより深いところは海溝という。世界でいちばん深いのは北西太平洋のグアム島の近くにあるマリアナ海溝で、最も深いところでは水深が1万920mもあるんだ。 | ||
日本の潜水調査船「しんかい6500」は6500mまで潜れるんだよね。 | ||
人が乗れる潜水調査船で6500mも潜れるのはすごいよ。水深6500mだと指先に小型の車1台分、約680㎏の重さが乗るくらいの水圧がかかるんだ。普通の潜水艇はつぶれるよ。 | ||
水圧って水が押す力だよね。 | ||
水圧はそこより上にある水の重さによって生じる、水中の物質にはたらく力のこと。水深が深くなればなるほど、上により多くの水があることになるから、水圧は大きくなるよ。海の中では水深が10m深くなるごとに水圧が1気圧ずつ大きくなる。1000mだと100気圧以上にもなるよ。これは1㎠の面に約100kgがかかるくらいの力なんだ。よく出される例が発泡スチロールでできたカップラーメンの容器。これを水深1000mの海に沈めると、約4分の1の大きさにつぶれるよ。 | ||
深海魚はそういう水圧の中で生きているのよね。どうしてつぶれずに生きていられるの? | ||
からだの中に空気のような気体が入るすき間があると、つぶれてしまうよ。でも深海魚は筋肉や脂肪がすき間なく詰まっていて、気体がほとんどないんだ。筋肉といっても水分がほとんどだから、からだがぶよぶよのものが多いよ。ぶよぶよだと逆に圧力には強いんだ。 | ||
でも魚には浮袋があるよ。浮袋の中には酸素とかの気体が入っているんじゃないの? | ||
深海魚は浮袋を持たないものが多いんだ。水深500mほどまでの深海に生息するアンコウもそうだよ。浮袋を持つ深海魚でもシーラカンスなどは、浮袋の中に水圧の影響を受けにくい油やガスが入っているよ。 | ||
陸に揚げられた深海魚が、目が飛び出していたり口から何かが出ていたりするのをテレビで見たことがあるよ。あれはどういうこと? | ||
水圧の高い深海から水圧のない地上に急に出てくると、浮袋の中の気体が膨らんで目や内臓が飛び出ることがあるんだ。口から浮袋が出ることもあるよ。 |
最も深い場所にいる魚は日本の近くに!
硬い殻で水圧から身を守る深海生物もいるよ。 | |||
ダイオウグソクムシがそうだよね! | |||
よく知っているね。ダイオウグソクムシやタカアシガニのような海生甲殻類は、硬い殻で水圧を防いでいるよ。深海魚には、体内のタンパク質が水圧で壊れるのを防ぐ物質を多く持つものもいる。これは魚の臭みの元となる物質で、深い海にいる魚ほど、たくさん体に含んでいることがわかっているんだ。 | |||
でもさすがにマリアナ海溝には魚はいないよね。深海魚ってどのくらい深いところまでいるんだろう。 | |||
いや、マリアナ海溝にも深海魚はいるよ。いちばん深いところではないけどね。深海魚が生きられる限界の深さは約8400mといわれていて、これまで魚が確認された最も深い場所は、マリアナ海溝の水深8178mだったよ。 | |||
富士山を二つ縦に重ねたよりもっと深いところにも、魚がすんでいるんだ。 | |||
実は今年4月、マリアナ海溝の水深8178m地点よりも深いところで、魚が見つかったことが発表されたよ。それが日本の近海なんだ。日本も参加した国際研究グループが、伊豆・小笠原海溝の水深8336mで魚が泳ぐ姿を、無人探査機のカメラで確認したんだ。世界一深い場所で確認された魚としてギネス世界記録にも認定されたよ。 | |||
撮影できたのはどんな魚なの? | |||
スネイルフィッシュという体長30cmぐらいの乳白色の魚だよ。深海魚の生態はまだわからないことが多いけど、こうした研究成果が続けば、謎がもっと解明されていくだろうね。 |
●富士山二つ分より深いところに魚がすんでいる!
保護者の方へ
ユニークな姿形から人気が高まっている深海魚は、水族館でも展示されるようになりました。水族館の深海魚は水深800mぐらいまでの比較的浅い深海にいるものがほとんどですが、それでも水圧の問題は生じます。理想的なのは水槽に深海と同じ水圧をかけることですが、そうした水槽を設置するにはとても費用がかかります。どうすればいいのでしょう。実は深海魚は水圧の高い海でなければ生きられないわけではありません。気圧の変化にゆっくり慣れさせていけば浅瀬でも生きていくことができます。深海から水揚げするときも時間をかけて網を上げるなど、徐々に低い水圧に慣れさせる工夫をしているそうです。
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