おしえてピグマはかせ
「ピグマキッズくらぶ」のテキストでおなじみのピグマはかせが、皆さんがふだん疑問に思っていることにお答えします。今回はカメの寿命のお話です。「鶴は千年、亀は万年」ということばがあるように、カメはほかの動物に比べて長生きです。それはなぜなのでしょうか。
カメはどうして長生きなの?
長生きの秘密はスローライフ?
今読んでいる本で、「鶴は千年、亀は万年」ということばが出てきたんだけど、どういう意味か知っている? | |||
うん。どちらも長生きだから、「長生きでおめでたい」というときに使うんだよね。 | |||
えっ!? ツルやカメはそんなに長生きなの? | |||
さすがに1000年も1万年も生きるわけではないよ。ツルは、国の特別天然記念物に指定され、みんなもよく知っているタンチョウで20~30年。特別に長いわけではないんだ。 | |||
なあんだ。じゃあ、カメは? | |||
カメも1万年生きることはないけれど、長生きなのは確かだね。たとえば、アメリカやメキシコに生息するアメリカハコガメの仲間は120~130年も生きることがあるといわれているよ。 | |||
へえ。人間よりも長生きなのね。 | |||
1mを超えるようなゾウガメのなかにはもっと長生きのものがいる。たとえば、南太平洋のセントヘレナ島で飼われているアルダブラゾウガメの「ジョナサン」は、推定年齢が190歳で、世界記録に認定されている。生きている陸生動物としては世界最高齢だそうだよ。 | |||
190歳!? 190年前って、日本はまだ江戸時代だよ。 | |||
そう。ペリーが浦賀に来航したのが1853年。その20年ほど前に生まれたとみられるカメがまだ生きているんだよ。 | |||
どうしてカメはそんなに長生きなの? | |||
はっきりとは解明されていないんだ。ただ、カメのからだのしくみや、生活スタイルが関係しているのではないかといわれているよ。 | |||
ふーん。カメって見ていてもあまり動かないよね。それがいいのかな。 | |||
するどいね。カメはからだの動きがゆっくりで、じっとしていることが多いよね。動物は、呼吸によって体内に取り込んだ酸素と、食べた物を化学反応させて、活動するエネルギーを得ているんだ。これを「代謝」というよ。カメはほかの動物に比べてその代謝の速度が遅い。全身に血液を送り出す心臓が、一定の時間内に収縮と拡張を繰り返す回数、つまり「心拍数」が少ないからなんだ。それだけエネルギーを消費するスピードが遅いので、長生きできるのではないかという説があるよ。これは爬虫類に共通する特徴で、爬虫類にはカメ以外にも100年以上も生きるものがいるんだ。 |
活発な動物ほど短命なのか?
じゃあ、のんびりしている生き物は長生きで、ネズミみたいに動き回る生き物は短命なの? | |||
確かに、生き物の寿命は心拍数と関係があって、心拍数の少ない生き物ほど長生きだという説はある。実際、人間の心拍数は1分間に60~80回くらいだけど、ハツカネズミのような、頭からお尻まで6~10㎝程度の小さなネズミは1分間に600~700回。逆に100年以上生きるといわれるリクガメの心拍数は1分間に10回以下だそうだ。 | |||
やっぱり、寿命と心拍数は関係あるのかな。 | |||
でも、同じネズミの仲間でも、ハダカデバネズミという地下にすむネズミは、ハツカネズミより少し大きい程度だけど、30年ぐらい生きるよ。子育てや餌探しを単独でこなす一般的なネズミとは違い、地下で群れをつくって、役割分担をして生活しているんだ。 | |||
へえ!長生きするネズミもいるんだね。 | |||
そう。小さくて活発に動く動物が、みんな短命とは限らない。コウモリだって日が暮れると活発に飛び回るけど、なかには30年以上も生きるものがいる。それから、鳥は活発に飛び回るし、そのためにエネルギーもたくさん使うよね。でも、哺乳類に比べて寿命が長い。これは、飛ぶ能力があると、地上で暮らす生き物より、敵に食べられにくいからではないかと考えられているんだ。ハダカデバネズミも、地下にいるおかげで、肉食動物に捕まって食べられる危険性が低い。だから長く生きられるのではないかといわれているよ。 | |||
そういえば、カメも甲羅に守られていて襲われにくいよね。 | |||
そうなんだ。捕食されにくいこともカメの長寿の要因ではないかと考えられているよ。動物の寿命や老化の研究は、多くの学者が取り組んでいる注目の分野だから、研究が進めば、人間の寿命を延ばしたり老化を遅らせたりすることにつながるかもしれないね。 |
●いろいろな動物のおおよその寿命
保護者の方へ
カメはなぜ長生きなのか。この疑問は子どもだけでなく、大人たちにとっても気になるテーマです。解明が進めば、老化を防ぐアンチエイジングがブームの今、人間の老化を遅らせ、健康寿命を延ばす方法が見つかるかもしれません。人間は加齢により、体の機能が衰えて病気になりやすくなり、死亡率も高まります。ところがカメは、種類によっては、加齢による老化現象がほとんど起きないことが最近の研究でわかっています。まさに人類あこがれの不老長寿です。カメが老化を回避できている要因は一体何なのでしょうか。興味は尽きません。
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