おしえてピグマはかせ
「ピグマキッズくらぶ」のテキストでおなじみのピグマはかせが、皆さんがふだん疑問に思っていることにお答えします。今回は紅葉(黄葉)のお話です。秋になって気温が下がってくると、カエデやイチョウなどの落葉樹を中心に、葉の色が赤や黄色になります。なぜでしょうか。
なぜ葉の色が赤や黄色に変わるの?
色の変化は「葉を落とす準備」
秋は紅葉のシーズンね。どこかに見に行きたいなあ。とてもきれいなのよね。 | |||
わかる!でも、どうして秋になると、葉っぱの色が変わるのかな。 | |||
それは、葉に含まれている「色素」のためだよ。秋になると、緑の色素が減って、黄色の色素が目立つようになるんだ。 | |||
色素って? | |||
色のもとになる物質のことを「色素」というよ。たとえば、ニンジンが濃いオレンジ色なのは「カロテン」という色素が含まれているから。葉っぱの色が緑なのも、「クロロフィル」という色素が含まれているからなんだよ。 | |||
クロロフィルって聞いたことがあるよ。確か、「光合成」に関係があるんだよね。 | |||
よく知っているね。植物は、「光合成」といって、昼は、太陽の光をエネルギー源として、水と二酸化炭素を使ってデンプンなどの栄養分をつくり出しているよね。光合成が行われるのは、葉の「葉緑体」という場所なんだ。ここに含まれている色素がクロロフィルだよ。この色素が、太陽の光で光合成をするんだ。でも、秋や冬は太陽が出ている時間が少なく、気温も低いから、光合成があまりできない。つまり、つくられる栄養分が減るってことだよね。それなのに葉を付けたままにしておくと、栄養分が葉に奪われ、水分も葉の表面から蒸発するので木が弱ってくる。だから、種類によっては、冬が近くなると葉を落として自分を守る木もあるんだ。 | |||
それが「落葉樹」ね。秋が深まると、葉っぱの色が赤や黄色になって、冬になると、すっかり葉を落としてしまう木をそう呼ぶのよね。 | |||
一年中、葉っぱが緑のままの木もあるよ。 | |||
それは「常緑樹」というんだ。木には、冬に葉を落とす落葉樹と、マツ、スギ、ツバキのように、冬でも青々とした葉を付けている常緑樹とがある。落葉樹は秋になると、クロロフィルを壊したり、クロロフィルがあまりつくられないようにしたりして、葉のはたらきを弱めていくんだ。たとえば、葉が黄色に変わるイチョウの場合、クロロフィルが減って緑が薄くなると、もともと含まれていた黄色の色素が目立ってくるんだ。 | |||
だから葉が黄色に変わったように見えるんだ。 | |||
ポプラやブナもそうだね。黄色の正体は「カロテノイド」という色素で、ニンジンに含まれているカロテンの仲間だよ。ちなみに、葉が黄色に変わるものを「黄葉」と書いて、赤に変わる「紅葉」と区別することもあるよ。 |
赤くなる理由は黄色とは違う
カエデは葉が赤くなるよね。これはどういうしくみなの? | |||
黄色の色素はもともとあったわけだけど、葉が赤くなるのは、新しい色素がつくられるから。カエデは葉を落とす準備として、葉に栄養が送られないように、葉と枝の間に「離層」という壁をつくる。離層ができても、葉は光合成を続けているので、光合成でつくられたブドウ糖などの栄養分は、枝に流れずに葉にたまる。そこに紫外線が当たると、新しく「アントシアニン」という色素がつくられるんだ。 | |||
それが赤い色素なのね。 | |||
そう。カエデの葉が赤くなるまでにはいくつかの段階があって、緑から少しずつ黒っぽい赤紫に変わった後で、きれいな赤になる。最初のうちは、残っていたクロロフィルの色と、新しくつくられたアントシアニンの色が混ざって、黒っぽく見えるんだ。アントシアニンは赤・紫・青をつくり出す色素だよ。 | |||
なるほど。同じカエデでも、場所によって色が少しずつ違って見えるのもきれいだよね。 | |||
同じ1本の木でも、枝のある位置によって光の当たり方が違うから葉の色は違うし、同じ種類の木でも生えている場所によって色が違うよね。アントシアニンは紫外線が当たるとつくられるから、日当たりの良い場所にある木のほうがきれいに紅葉するよ。湿度もある程度あったほうがきれいな色が出るので、川や湖の近くには、きれいな紅葉が見られる場所が多いんだ。 | |||
紅葉の名所ってあるものね。 | |||
みんなの家の近所にも紅葉が見られるところがあると思うよ。ぜひ観察してみてね。 |
●葉の色が変わるしくみ
保護者の方へ
アントシアニンは、ブルーベリー、ブドウ、ナス、ムラサキイモなどの野菜や果物によく含まれている色素です。なぜ、落葉する前にアントシアニンができるのでしょうか。理由は解明されていませんが、アントシアニンには紫外線を吸収するはたらきがあるため、葉のはたらきが抑制された時期に、強すぎる紫外線から細胞を守るようにしているのではないかという説があります。実際、春先に見られる新芽や若葉には、赤紫のものが少なくありません。この赤についても、アントシアニンが傷つきやすい新芽や若葉を強い日差しから守っているのではないかといわれます。色という視点から、植物の生存戦略を考えてみるのもおもしろいかもしれません。
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