おしえてピグマはかせ
「ピグマキッズくらぶ」のテキストでおなじみのピグマはかせが、皆さんがふだん疑問に思っていることにお答えします。今回はチーターのお話です。チーターは哺乳類のなかでいちばん足が速く、時速100km以上で走れるといわれます。どうしてそんなに速く走れるのでしょうか。
チーターはどうして足が速いの?
急発進、急停止、Uターンも得意
体育の授業でリレーをやるんだ。ぼくのチームが1番になるといいな。 | ||
ひかるくんは走るのが速いもんね。 | ||
まあね。チーターには負けるけどね。 | ||
チーターって哺乳類のなかでいちばん足が速いんだよね。かけっこで誰にも負けないんだから、気持ちいいだろうなあ。 | ||
チーターの最高時速は約100kmといわれているよ。1秒間で約30m進む計算だ。 | ||
じゃあ3秒ちょっとで100mを走れるってこと? 陸上100m走の世界記録が9.58秒だから、人間が30m走ったころには、もうゴールしているんだ。すごい! | ||
速く走れるだけじゃないよ。チーターはじっとしていても、瞬間的にダッシュできるんだ。走り始めてから3~4秒でトップスピードになるといわれているよ。しかも全速力で走っていても、ほぼ瞬間的に止まることができる。急にUターンするのも得意だよ。 | ||
サッカー選手なら大活躍だろうなあ。どうしてそんなことができるの? | ||
スピードの秘密は、体のつくりにあるよ。チーターは、ほかのネコ科の肉食獣と比べてどんな特徴があると思う? | ||
トラやライオンに比べると、体が細いわ。 | ||
そのとおり。余分な脂肪をため込んでおらず、体脂肪率(体重に占める脂肪の割合)は4~5%ぐらいなんだ。人間の場合、男性は15~20%、女性は20~25%が適正といわれているから、チーターの場合は、ほとんどが筋肉ということだね。しかも、体が柔らかく、発達した筋肉で、背骨をしなやかに曲げたり伸ばしたりできる。だから、足を大きく動かして速く走れるんだ。そのほかにも、チーターがトラやライオンと異なる点があるけど、わかるかい? | ||
トラやライオンより頭が小さい? | ||
そうだね。頭が小さくて軽いと、走るときに受ける風の抵抗を少なくできるから、それだけ速く走れるんだ。さらに、長いしっぽも大切。全速力で走るときにバランスをとる役目をするし、すばやく方向転換ができるのも、この長いしっぽのおかげなんだ。 |
スタミナがないのが弱み、狩りも苦手?
体全体が速く走るためにできているんだね。 | ||
爪にも特徴があるよ。ネコがそうだけど、ネコ科の動物の多くは爪を出し入れできるんだ。獲物に忍び寄るときは、音を立てないように爪を隠すよ。でもチーターの爪は出たまま。それがスパイクのように地面を強く蹴り、速く走るのに役立っているんだ。それから、速く走るためには心臓や肺が強くないといけないから、チーターは胸を取り巻く骨格が大きくなっているのも特徴だよ。ほかの体の部分も、速く走るのに役立つところがいろいろあるんだ。 | ||
そんなに速く走れるなら、獲物も狩り放題だね。 | ||
そう思うよね。でも、そんなこともないんだ。走るのは速いけれど、持久力がなく、すぐに息切れして、疲れてしまうんだ。トップスピードで走れるのはせいぜい300mぐらいまで。それを過ぎたら、もうあきらめちゃうね。 | ||
そこは人間と同じね。誰だって長い時間、全力疾走なんてできないもの。 | ||
筋肉の違いにも原因があるよ。筋肉には大きく分けて、「速筋」と「遅筋」という二つのタイプがある。「速筋」は瞬間的にすばやく縮み、持久力はないけれど一度に大きな力が出せるもの。「遅筋」はゆっくり縮んで一定の運動を長く続けられるものだよ。人間の体は普通、「速筋」と「遅筋」が同じくらいの割合だけど、チーターは体全体の70%くらいが速筋なんだ。 | ||
速筋の割合が大きいのも、一度に大きな力を出せる代わりに、持久力がない原因なんだね。 | ||
顎が小さくて、かむ力も弱いから、獲物を捕まえたものの、仕留めるのに時間がかかって、その間にハイエナやライオンに横取りされることも多いようだよ。 | ||
ほかの肉食獣との戦いには向いてないんだね。 | ||
そうだね。結局は、それぞれの動物に強いところと、弱いところがあるということなんだろうね。 |
●チーターの体は「速く走るための機能」でいっぱい
保護者の方へ
チーターは哺乳綱食肉目ネコ科の動物。同じ分類の仲間にはライオン・ヒョウ・トラ・ジャガー・ピューマなどがいます。チーターと姿形が似た動物もいますが、図鑑などで見比べると、頭の大きさ、足の長さ、太ももの筋肉など、チーターの体には特徴があります。速く走るために特化した体のつくりをしているのです。動物園に行く機会があったらよく見てみましょう。張り出す肩甲骨、大きく広がる胸郭など、じっくり観察すると際立った特徴が見つかるはずです。ほかの動物と比べて見てみることは、新しい発見につながります。観察して気づいた特徴に、動物の驚くべき能力の秘密が潜んでいるかもしれません。
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