受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

子育てインタビュー

株式会社 刀 取締役CFO
株式会社 沖縄アドベンチャートラベル 代表取締役
立見 信之さん

株式会社 刀
株式会社 沖縄アドベンチャートラベル
三川 裕一郎さん

豊かな感性と生き抜く力を育むために

デジタル偏重の時代だからこそ
“親子旅”で多様性に触れる体験を

 「アクティビティー」「自然体験」「異文化体験」のうち二つ以上の要素で構成される、「アドベンチャーツーリズム」が話題を集めています。離れた土地の自然や文化を知る体験は、大人のみならず子どもの人間形成にも大きく影響します。そこに着目したのが、株式会社刀が提案する地域密着型の“親子旅”です。開発の経緯や今後の展望について、ツアーを運営する株式会社沖縄アドベンチャートラベル・代表取締役の立見信之さんとプロジェクト担当の三川裕一郎さんに、SAPIX YOZEMI GROUPの髙宮共同代表がお話を伺いました。

大切なのはニーズの“深掘り”
深層心理を集客拡大につなげる


SAPIX YOZEMI GROUP共同代表
株式会社日本入試センター 取締役副社長
髙宮 敏郎

髙宮 株式会社刀は有名テーマパークの再生事業や国内企業のリブランディングなどで知られていますが、具体的な業務内容について教えていただけますか。

三川 わたしたちの主な仕事は、独自のマーケティング手法を駆使しながら、集客や売り上げに悩む国内企業を応援することです。それぞれの企業が持つセールスポイントと消費者の深層心理(インサイト)を合致させ、人を動かし、経済を活性化することが目標となります。マーケティングで大切なのは、消費者が考える「こんなものがあったらいいな」という表層的なニーズに満足せず、さらにその奥にあるインサイトを深掘りする姿勢です。ターゲットとなる消費者がどういう属性で、日ごろからどんなことを考えているかを精緻に分析することで、効果的な施策につなげています。

立見 たとえばテーマパーク再生事業では、インタビューやアンケートを通して、子どもの引率者である保護者、とりわけ母親のインサイトを重点的に探っていきました。その結果、テーマパークに足を運ぶ動機について、表向きには「子どもに喜んでもらいたい」と言いながらも、その奥には「親という立場を忘れて、自分自身も心ゆくまで楽しみたい」という気持ちがあることがわかりました。そこで、パークで遊ぶ一日だけは、「お母さんにも日ごろの些事を忘れて大いに楽しんでもらおう」と、ハロウィンの時期に大人向けの仮装イベントなどを企画。それが爆発的な集客につながりました。

髙宮 消費者の深層心理をとことん考え抜くことが、企画のヒットにつながったわけですね。わたしが仕事をしていて感じるのは、ノイジー・マイノリティーとサイレント・マジョリティーを見極めることの難しさです。そこを見誤った結果、打ち手が実態とかけ離れてしまった、ということはないのでしょうか。

立見 そのようなことがないように、調査は1000~2000人規模の大きな母集団を対象に行っています。定量調査と定性調査の両方を掛け合わせ、多様な角度から隠れた消費者心理を読み解くことを大切にしています。

少人数制・地域密着型の
アドベンチャーツーリズムを企画


株式会社刀と株式会社沖縄アドベンチャートラベルが企画運営するアドベンチャーツーリズム「OKINAWA ADVENTURES」

髙宮 最近は、マーケティング事業のみならず、旅行事業にも力を入れていらっしゃるそうですね。

立見 はい。株式会社刀の子会社として株式会社沖縄アドベンチャートラベルを立ち上げ、アドベンチャーツーリズムを提供する新事業に取り組んでいます。アドベンチャーツーリズムとは、欧米の富裕層を中心に支持されている旅の形態で、旅行を単なる贅沢品としてではなく、目的を持って楽しもうという考え方です。日本でもそうした需要が年々高まっていることから、「OKINAWA ADVENTURES」という旅ブランドを立ち上げ、少人数制・地域密着型ツアーの企画運営を行っています。

三川 「OKINAWA ADVENTURES」の舞台となる沖縄島北部は、豊かな自然に恵まれた環境にありながら、経済的には課題を抱えている地域です。そこに埋もれている自然や文化の魅力を発信できれば、消費者は地域の良さを知ることができるし、地元は経済的な恩恵を受けられます。そういう双方にメリットがある関係を作りたいという思いで、この事業をスタートしました。

髙宮 もともとは大人向けに企画されたものの、テストツアーを実施したところ、「ぜひ、自分の子どもにも体験させたい」との声が多数上がったそうですね。

三川 はい。それを商品化したのが、この夏に小・中学生とその保護者を対象に実施される「『生きる力』をみがく親子旅 in 沖縄やんばるの海」と、一般の方を対象にした「サンゴの海、うみんちゅの祈り」(子どもも参加可)の二つのツアーです。伝統帆船に乗って釣りをしたり、若き船大工や漁師の話を聞いたりしながら、都市にはない生活スタイルや多様な人生観があることを学びます。また、サンゴの植え付けやシュノーケリングといった、沖縄の豊かな自然を味わう時間も設けています。

立見 このツアーには三つの特徴があります。一つ目は物語性があることで、旅全体が一つのテーマを持って設計されています。二つ目は導き手がいること。ツアー全体を取りまとめるガイドと現地ガイドとによる二方向のサポートによって、地域への理解がより深まります。そして三つ目は達成感があること。みずからの手や足を動かすことによって、新しい気づきが得られます。これらの特徴のなかに、通常の旅では味わえない、アドベンチャーツーリズムの醍醐味があると考えています。

24年7月号 子育てインタビュー:
1|

ページトップ このページTopへ