受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

子育てインタビュー

教育ライターが「中学受験」について語る

将来の選択肢を広げるために
今こそ育みたい「学びを楽しむ力」

 将来の予測が立てにくくなった今、これからの時代を生きる子どもたちには、どのような力が求められているのでしょうか。今回は、今年2月に『10万人以上を指導した中学受験塾 SAPIXだから知っている頭のいい子が家でやっていること』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)を上梓された、教育ライターの佐藤智さんにインタビュー。学び続けることの大切さや、保護者の子どもとの関わり方などについてお聞きしました。

「好きなこと」と「教科の学習」は
地続きに隣り合っている

広野 今回上梓された著書では、「学び続ける力・学びを楽しむ力とは何か」ということが大きなテーマになっているように思います。実際にサピックスを取材して、この点についてどうお感じになりましたか。

佐藤 社会が大きく変わりつつあり、将来の予測が立てにくい時代になってきています。子どもたちが大人になるころには、まったく新しい職業が生まれ、人生の選択肢がより広がっているかもしれません。そうしたなかで、学びを楽しみ、学びによって困難を克服していく力を身につけていくことは、とても重要だと思います。

 学びを楽しむ力を育てるためには、小さなうちから好きなことに打ち込ませることが大切だ、とよく言われますが、「本当にそれで大丈夫か、学力はつくのか」と悩む保護者は多いようです。しかし、サピックスの先生方への取材を通して、子どもの「好きなこと」と「教科の学習」は対極に位置しているのではなく、実は地続きに隣り合っているのだと、あらためて感じました。興味を持った分野・領域を探究していくことは、自分の道を選択することにもつながります。何が子どもの可能性を広げるかはわかりませんから、保護者の方には長い目で、お子さんのすることを見守っていただきたいと思います。

広野 子どもは、いろいろなことに興味を持ちます。そして、何がモチベーションアップのきっかけになるかは、人それぞれです。テレビのニュースや科学番組、歴史漫画などがきっかけになることもあれば、動物園や水族館で生き物に出合って、学びの意欲が高まることもあります。ご家庭では、まずはいろいろな体験をさせて、わが子が興味を持ちそうなものを親子で一緒に探すということが必要なのかなと思っています。子どもが興味を示し、調べたり工夫したりするようなら、そのことをほめたうえで、「これについて調べてみたら」と興味を広げるようなアドバイスをするとよいでしょう。

佐藤 先生方のお話を聞いていて、もう一つ印象的だったのは、「サピックスでは友だちの合格を心から喜べるようになる」とおっしゃったことです。和気あいあいと一緒に学び合う雰囲気づくりが、学びを楽しむためのポイントになるのでしょうね。

広野 仲間の存在は、とても重要です。まず、「あの子ががんばるなら自分も」というモチベーションになります。そして何よりも、自分とは異なる考えにたくさん触れて、そこから刺激を受けることで、興味・関心の対象が広がり、知的好奇心が育まれます。「仲間と一緒に学ぶ子は伸びる」と、わたし自身も教室で実感しています。

子ども自身の「育つ力」を信じて
成長を見守ることが大切

佐藤 仲間とともに、家族の存在も重要になると思います。逆に、わたしから広野先生にお伺いしたいのですが、受験生活を送るなかで、家庭ではどのようなサポートを心がけたらいいのでしょうか。

広野 毎日お忙しいにもかかわらず、保護者の皆さんはいろいろと工夫をされています。あるご家庭では、リビングルームに小さなホワイトボードを置いて、子どもに授業で印象に残った問題を解説させているそうです。誰かに説明することで、さらに理解が深まるというわけですね。親子でいろいろ話し合いながらニュース番組を見る、というご家庭もあります。話した内容は記憶に残りますから、家庭での会話は大切です。短い時間のなかで、親子でどう学習に向き合うか、工夫していただけるといいですね。

佐藤 ただ「勉強しなさい」と子どもを追い立てるのではなく、大人も読書や勉強にチャレンジして、学びを楽しむ姿を見せることも重要ですね。お子さんが学びを楽しめるようになったり、家族が応援してくれることで自分自身を信じられるようになったりすれば、将来、社会がどれほど大きく変化しても、その子は柔軟に対応できると思います。

 その点、サピックスでは、中学受験を通じて、子どもたちにどのように成長してほしいとお考えですか。

広野 受験勉強に取り組んだ経験は、必ずその後の学びの土台になります。このことは多くの卒塾生が指摘しています。また、多くの子どもたちが受験体験記などに、周囲の方々への感謝の気持ちをつづっています。中学受験は、そうした心の成長のきっかけにもなります。受験を通して身につけた、努力する力、感謝する心、それこそが今後の人生で何よりの財産になると思います。

佐藤 数多くある選択肢の一つとして、中学受験に親子で楽しみながら挑戦する、そして保護者は少しずつ手を放していって、子どもが自分の力で将来の道を選択できるようになっていくのを見守る、そうした接し方ができるといいですね。

広野 子ども自身が持つ、「育つ力」を信じることが大切ですね。本日は、ありがとうございました。

10万人以上を指導した中学受験塾
SAPIXだから知っている
頭のいい子が家でやっていること』

佐藤智 著
ディスカヴァー・トゥエンティワン 刊
1,760円(税込)

 勉強について子どもにどう働きかければいいのか。本書は、そんな悩みを抱える保護者に向けた一冊。SAPIX小学部のベテラン講師陣に取材し、勉強に対する興味を育むにはどうすればいいのか、学び続けていく力を伸ばすにはどういった習慣が必要かなど、家庭での過ごし方や働きかけについて、詳しく紹介しています。

先生のための
小学校プログラミング教育が
よくわかる本』

利根川裕太 ・佐藤智 著 
一般社団法人みんなのコード 監修 翔泳社 刊
1,848円(税込)

 小学校では2020年よりプログラミング教育が必修化されています。そもそもプログラミング教育とはどのようなものか、何をどう教えればいいのか。悩める教育現場に、豊富な学習事例をベースにして指針を提示。教師だけでなく、学校でどのような教育が行われているかを知りたい保護者にも参考になります。

23年5月号 子育てインタビュー:
|2

ページトップ このページTopへ