受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/全国版

社会貢献するための
全人教育を通して
「己の如く人を愛する」人に

暁星中学校・高等学校 校長 髙田 裕和 先生

医学部進学者を多数輩出
背景にある「命と向き合う教育」

キャプションあり
上/2020年に完成した多目的棟(マリア館)。4階のテラスは生徒たちの憩いの場となっており、自習スペースも設置されています
下/多目的棟(マリア館)にある情報教室。1人1台のiPadが用意され、さまざまな授業で使用されています

山口 進路指導は「カトリック精神に基づいた人間教育の一環」とのことですが、これについてご説明いただけますか。

髙田 本校は進学校ですが、志望校合格がゴールではありません。大学卒業後のことも見通しながら、カトリック精神に基づいた人間教育の一環として、自己の能力や才能を生かして社会に貢献する人間を育てることを根本方針としています。単に大学に進学するためではなく、大学での専門教育で能力や才能をより伸ばしていけるような「幅と奥行き」を大切に指導しています。

神田 特に貴校は、数多くの医師を輩出していることでも知られています。医学部に進学を希望する生徒が多いことからも、倫理面の教育はとても大切になってくると思います。

髙田 なぜ卒業生の多くが医学の道に進んでいくのかを、いろいろな人に伺ったことがあります。たまたまお父さまが医師で、跡を継ぐために医学部をめざすという生徒もいますが、本校で学んだ6年間のなかで、宗教教育を通して命の問題や他者とのかかわりについて考え、自分が受けたものをどのように人に還元していくのかを考えるようになった、という生徒もかなりいます。人に還元できる機会を与えられたことに感謝し、還元することが相手のプラスになることを、自己満足ではなく喜ぶことができる、そんな人になってほしいと思っています。

神田 そうでなければ、患者の心の痛みに寄り添う医師にはなれませんね。

髙田 どんな考えで医学部を志望するのか、実際のところはよくわかりませんが、わたしたちの教育のなかの一つの筋道を通して、人の命にかかわる医師という職業を選んでくれる生徒がいるのはありがたいことです。宗教教育の一つの成果だと思っています。

神田 ある医学部の先生がおっしゃっていました。病気が治った患者さんからいただく感謝の手紙はうれしい。でも、残念ながら亡くなってしまった方のご家族から感謝の手紙をいただいたとき、大変な思いをしたけれど本当に救われる思いがする、と。精神的な支柱を持つことがいかに大切な仕事かと思います。そういう卒業生を数多く出していらっしゃるのですね。

髙田 マリア会の創立者が最初に考えたことがまさにそうです。フランス革命の後、荒廃した社会で教育ができなくなったなか、人とは違うものを受けたわたしがどういう形でそれを人に還元していくのか。それによって、他者が違う生き方ができるようになったことを共にどう喜ぶのか。そうしたことを教育の根幹に置き、修道会の教育の一つの目標としたのは、大きなことだと思っています。

23年2月号 さぴあインタビュー/全国版:
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