受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/関西情報

自由な校風を守り続け
盛んな行事やクラブ活動で
個性あふれる人物を育む

東大寺学園中・高等学校 校長 森 宏志 先生

東大寺を母体とした
95年の歴史を持つ伝統校

髙宮 まず、貴校の歴史から伺いたいと思います。

 本校のルーツは、1926(大正15)年に設立された夜間中学の金鐘中等学校です。「もっと学んで社会の役に立ちたい」という勤労青年たちからの要望を受け、当時の東大寺の僧侶たちが夜間に勉強を教えたのが始まりです。戦後の1947(昭和22)年には、同じ校舎で昼間の時間帯に学ぶ菁々中学校が設立されました。そして1963年に全日制の高校を併設し、現在の学校名に変わりました。当初は東大寺の境内にある小規模な学校だったので、中学は1学年2クラス、高校でも1学年3クラスしかなく、その分、生徒と教員の関係が密接な、非常にアットホームな環境でした。

聞き手1
SAPIX YOZEMI GROUP
共同代表
髙宮 敏郎

 現在の地(奈良市山陵町)に移転したのは1986年。それ以降は中高合わせて約1200名という現在の規模になりました。生徒数は増えても、校風は変わりません。生徒を管理して枠にはめるのではなく、一人ひとりの生徒の思いを大切にする自由な校風はずっと受け継がれています。自由な校風を保っているのは、そうした環境の下でなければ個性的な生徒は育たないと考えているためです。それが本校の教育理念ですから、今後もずっとそうした学校でありたいと思っています。

髙宮 さて、昨年の春から、新型コロナウイルス感染症が拡大しています。これまで貴校では、どのように対応されているのですか。

 昨年は、3~5月の3か月間を休校とし、6月からは時差を設けるなどして登校を再開しました。今年は5月の大型連休明けから、登校時間と授業時間を変更するなどして対応しています。従来は8時30分までに登校し、8時40分から朝礼を行った後、8時45分から1時間目の授業が始まります。授業は1コマ50分、6時間目の授業が終わるのが15時10分です。それを連休明けより、登校時間を7時から9時までとして、9時15分から1時間目の授業をスタートし、授業は1コマ45分に短縮しました。

 全校生徒の3割が奈良県内在住で、4割が大阪府、2割が京都府から通学し、神戸や名古屋から通学している生徒もいます。そのように、生徒の通学圏が広域にわたっているので、各自が密にならない時間帯に登校できるよう、登校時間に幅を持たせました。

中嶋 オンライン授業は、いつから開始されたのですか。

 昨年6月に学校を再開した際に、初めてのオンライン授業を開始しました。教員たちの習熟度には、ばらつきがありましたが、生徒たちにアンケートをとったところ、生徒のほうがオンラインに対する抵抗感が低いという印象を受けました。人気だったのはオンデマンド型の配信授業です。オンデマンドの場合は教員も授業を作り込むので、内容のしっかりしたものが出来上がります。また、生徒も繰り返し見ることができます。しかし、教員には負担になりますね。

中嶋 オンライン授業の課題は何だとお考えでしょうか。

 やはり、端末の整備など技術面のことです。また、文部科学省は双方向のオンライン授業にこだわっているので、特に高校では、授業を録画したものを見ただけではその授業に出席したことにはなりません。そこが大きなハードルだと思います。

髙宮 もし、新型コロナが教育を変えるとすると、履修主義から修得主義に変わる一つのきっかけになるかもしれないと思います。出席しなければならないという考えに固執せず、授業の形はどうあれ、課題やテストで理解したことが確認できれば、それで単位になるというしくみに変えないと、不都合が大きいですね。

 修得主義になると、たとえば、不登校の生徒にとってはチャンスではありますね。また、本校の場合ですと、新型コロナが収束した後も、英語などを中心にオンライン授業は続けていくだろうと思います。

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21年7月号 さぴあインタビュー/関西情報:
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