受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

学校説明会レポート

鹿児島県立楠隼中学校

2024年10月28日(月)

寮生活や宇宙学を通じて「大志」「叡智」「至誠」の精神を身につける

 2015年に開校した鹿児島県立楠隼(なんしゅん)中学校・高等学校は、大隅半島東部に位置する肝付町にある寮制の公立中高一貫校です。現在は全寮制の男子校ですが、2026年以降、「共学化」「通学生の受け入れ」「完全中高一貫化」といった変革を予定しています。

 広く全国から生徒を募集している同校では、県外出身者が約4割を占め、多様な価値観を持つ生徒が寮での集団生活を通して学び合っています。このような学習環境の下、今年で開校10周年という新しい学校でありながら、3年連続で東京大学への合格者を出すなど確かな実績を残しています。

 オンラインで開催されたこの日の説明会の冒頭、教頭の上野宏樹先生は同校の校訓に触れ、「自己を確立する『大志』、好学の気風『叡智』、偏見にとらわれず利他の精神で行動する『至誠』の三つの校訓に基づき、広い視野と確かな学力を持ち、自分の未来を自分で切り開き、国際社会のなかで他者の幸福のために行動できる生徒を育成していきます」と力強く話しました。

 この教育理念を実現する土台となるのが、寮生活です。寮は全部で6棟あり、そのうち1棟は受験生である高3生専用です。残り5棟には中1から高2までの生徒が一緒に生活し、高2生がリーダーとなって後輩の面倒をみています。上野先生は「これは、鹿児島で江戸時代から続く、年上の者が年下の者に学問や剣術を教える郷中(ごじゅう)教育の精神を受け継ぐものです」と話します。

 異年齢の交わりからさまざまなことを学ぶ一方で、最先端の科学にも触れます。同校の教育活動で目を引くのが、「シリーズ宇宙学」の授業です。肝付町にある宇宙航空研究開発機構(JAXA)の内之浦宇宙空間観測所ではロケットの打ち上げが行われており、そうした縁から同校は、JAXAと県教育委員会が提携して進めている宇宙航空教育推進モデル校に指定されています。「宇宙学」ではさまざまな企業・研究所・大学の協力を得ながら、中1から宇宙について学びます。高校では、宇宙生命系・航空工学系・宇宙開発系・応用工学系の4コースに分かれ、宇宙に関連する知識や技術を実際のビジネスでどう活用できるのかを探究します。

 この宇宙学のほかにも、海外大学企業連携研修、農業漁業民泊体験、トップリーダー教室などさまざまなプログラムがあり、生徒たちは次世代リーダーとしての素養を身につけていきます。

 続いて、広報担当の安樂舟先生からは、寮生活と入学者選抜について詳しい説明がありました。寮は、1人1部屋の完全個室です。授業や部活動を終えた後、中学生は2時間、高校生は3時間の学習時間が確保されています。「規則正しい生活を送りながら、仲間と同じタイムスケジュールで切磋琢磨できる学習環境は最適ではないでしょうか」と話す安樂先生は、夜の学習でも学習指導員による講座を受講したり、個別指導を受けたりできると言います。このように、寮内で受験対策が完結することも大きなメリットです。

 入学者選抜は、1月19日に同校のほか、鹿児島市・東京・大阪・福岡の5会場で実施される予定です。定員は60名で、適性検査Ⅰ・Ⅱと面接が同日に行われます。最後に、教頭の上野宏樹先生が「思春期の子どもを旅立たせるのは大きな決断になるかと思います。保護者の方が育てたお子さんを大切にお預かりして、教職員全員で生徒の心を支えながら、目標に向かってまっすぐ進んでいけるような人物に育てていきたいと思います」と述べ、説明会を締めくくりました。

イメージ写真 緑豊かな環境にある、寮制の中高一貫校。車で30分ほどの場所に内之浦宇宙空間観測所があり、中1の地域研究の際に見学します。2024年度には創立10周年を迎えました

www.edu.pref.kagoshima.jp/sh/nansyun/ 別ウィンドウが開きます。

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