受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

学校説明会レポート

富士見中学校

2024年7月4日(木)

原点である「米穀・証券・美術」に注目したプロジェクトが始動

 今からちょうど100年前の1924年に発足した富士見高等女学校は、1940年に山崎学園による運営になりました。建学の精神は「純真・勤勉・着実」です。女子進学校に成長した現在も、初代理事長・山崎種二の「本物の芸術に触れてほしい」という思いは受け継がれています。たとえば、校内の各所に彫刻や絵画が展示され、生徒の感性を育んでいます。

 この説明会では、開始前に高3による創作ダンスの映像が流れ、その後に今年度から校長に着任した善本久子先生が登壇しました。「約40年ぶりに国を挙げて大学入試改革などの教育改革が進められていますが、本校も教育目標の『社会貢献できる女性(ひと)』の育成に、これまで以上に力を入れて励むつもりです。創立者の山崎種二は、米穀・証券・美術という三つの異業種を扱う『山種グループ』を創業し、実業家として成功しました。そこで、本校では、今年度からその原点に立ち戻って、この山種リソースに基づいた新しい三つの取り組みをスタートさせました」と力強く述べました。

 一つ目は「米(第一次産業)を中核とした探究」です。今年5月には校内の日当たりの良い場所に田んぼが設置されました。同時に、千葉県の九十九里浜の契約農家に足を運び、一から米を栽培していくことにしました。5月にはすでに生徒が田植えを体験しましたが、8月末には稲刈りも予定しています。さらに、収穫した米のパッケージをデザインし、文化祭で「富士見米」として販売します。この新たな取り組みには、「机上では得られない体験的な学びを通して、食糧生産や地球環境といったグローバルな課題に向き合う」という狙いがあります。

 二つ目は「先進的な金融教育」です。たとえば、中3~高1では、チームごとに1000万円(仮想通貨)を企業に投資し、約4か月間の運用成績を競い合う「Stock Market GAME」というプログラムを実践しています。善本先生は「お金に流されることなく、主体的にお金と向き合い、マネジメントする感覚・資質は次代を生きる女性に必ず必要となるものです。それを育むのが目的です」と強調しました。

 三つ目は「所蔵美術品活用による芸術教育」です。同校には400点もの美術品がありますが、それを活用した教育を推進する予定です。特に「日本文化を自分のことばで語る」ことができるよう、自国の芸術である日本画の知識や技術についてていねいに指導する方針です。加えて、「情操面でも成長できる環境を整えていきます」と決意を示しました。

 このほか、東京理科大学や日本女子大学との高大連携事業や、数多くの海外研究プログラム、留学支援、国際交流イベントといったグローバル教育についても紹介しました。

 次に、中3副担任の岩堀夏子先生が、生徒が身につけるべき「17の力」と探究プログラムについて説明しました。同校では教育目標の実現をめざし、「自分の意見を形成する力」「聴く力」「課題を発見する力」などから成る「17の力」を育てるために、さまざまな取り組みを行っています。なかでも、力を注いでいるのが探究プログラムです。学年ごとにテーマが掲げられ、中1では探究の入り口として「問う」ことにフォーカスして考えていきます。一人ひとりの生徒が、何らかの「モノ」について探究します。中2では、練馬区の協働推進課とコラボし、グループ単位で「ねりま探究」に取り組みますが、そこでは文献調査だけでなく、自分たちで直接インタビューをするなどのフィールドワークも行っていきます。中3では「my探究」をテーマに卒業研究を行い、最終的に全員が探究本を作って電子書籍化します。

 最後に、入試広報部長の藤川建先生から卒業後の進路に関する説明がありました。今春は、卒業生の約半数が国公立大学、早慶上理ICU、GMARCH、医学部医学科に進学しています。また、2022年に東京理科大学との教育提携が本格化した影響から、理系をめざす生徒が増えているとのことです。一方で、例年1割程度の卒業生が家政系・芸術系・体育系の学部・学科に進学するなど、進路の選択肢が多様で幅広いことも伝えられました。

イメージ写真 「Learning Hub」と呼ばれる図書館は教科・探究を支援するハブの役割を担い、普段は授業でも活用されています。校内には無線LANが完備され、温水プール、和室、人工芝のグラウンドなどの施設も充実しています

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