受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

学校説明会レポート

灘中学校

2024年6月21日(金)

「精力善用」「自他共栄」の校是の下、自由な校風を受け継ぐ男子伝統校

 灘中学校は、灘五郷(なだごごう)で酒造業を営む三家の篤志を受けて1927年に旧制灘中学校として設立されました。それ以来、「精力善用」と「自他共栄」を校是とし、生徒の自主性を重んじる自由な校風を維持しています。東京大学をはじめとする最難関大学の合格実績の高さから国内屈指の進学校としても広く知られ、関西圏以外のエリアからも多くの志願者が集まります。

 オンラインで開催されたこの日の説明会は、サピックス教育事業本部本部長の広野雅明先生による入試分析で始まりました。初めに、合格力判定サピックスオープンのデータから「偏差値72以上が取れれば合格可能性はかなり高く、64以上で約5割ですが、それより下では合格は厳しいです」と話しました。続いて例年、1月中旬の入試解禁日初日とその翌日の2日間かけて入試が実施されることや、国語・算数・理科の3科入試であることに触れ、各教科の出題傾向を解説しました。近年では、首都圏の校舎からの出願者が増加しています。力試しではなく、実際に進学することをめざして受験する生徒も少なくないとのことです。そうした希望に合わせて、サピックスでは、首都圏の6年生を対象に、今年から、夏期と後期に、オンデマンド型の「灘中特別算数講座」を新設し、入試直前期には実際の入試と同じ形式でテスト演習ができる「灘中直前対策セット」も準備します。さらに、本校で実施される入試に向けては、サピックス主催の「灘中受験ツアー」も例年実施していることを報告しました。

 続いて登壇した校長の海保雅一先生は、「灘校の強み」として三つの特徴を挙げ、教育方針と学習内容を説明しました。まず、「強み」の一つ目は「質の高い授業」です。生徒の知的好奇心や探究心に応えるために、単元ごとに深く掘り下げ、時には教科の枠を超えた横断型の授業を展開しています。その進度は速く、数学・英語は中2の途中から高校の範囲に入りますが、海保先生によると「生徒の理解度に合わせていると、おのずとそうなります」とのことです。また、そうした学習環境を支えているのが、原則として8人の教員が担任団となり、入学から卒業までの6年間を受け持つ「担任持ち上がり制」です。担任団には英語・国語・数学の教員が必ず含まれており、同じ科目については、全クラスの授業を一人の教員が担当するので、創意工夫を凝らした授業を計画的に進められるそうです。ほかにも、さまざまな分野の第一線で活躍する卒業生や専門家を招いて行う「土曜講座」や、常駐する2名の専任司書教諭が生徒の学習や探究活動をサポートする学校図書館の様子も紹介しました。

 二つ目は、生徒が主体的に取り組む校風が培われている点です。部活動が盛んで、25の文化部、17の運動部があり、加入率は8割以上です。学校が兼部を推奨していることもあり、複数の部を掛け持ちしている生徒もたくさんいます。生徒会傘下の文化委員会、体育委員会などに加わる生徒も非常に多く、主要学校行事は生徒会が企画運営を行っています。さらに、海保先生は、上位入賞者を輩出し続ける科学オリンピックなどの校外コンテストの成果を示しながら、「経験者がゼミや勉強会を開き、後輩に継承しているようです。やり抜く力やコミュニケーション能力といった非認知能力が鍛えられる機会が豊富にある学校だと自負しています」と強調しました。

 そして三つ目は、「精力善用(自己の持てる力を最も有効に活用する)」と「自他共栄(互いに助け合い譲り合って、自分も他者も共に生き栄える社会をつくる)」の二つの校是と、昭和モダニズムを継承する「自主・自由の学校文化」です。海保先生は、校則も制服もない自由な校風に触れながら、「規則で縛りつければ生徒の思考は停止してしまい、主体的な学びは実現不可能となります。行事など集団活動の場を豊富に設けたところで、教員の指示に従うだけでは、非認知能力が育つはずがありません」と結びました。

イメージ写真 創立時から現在に至るまで使用されている本館。国の登録有形文化財に指定されています

www.nada.ac.jp/ 別ウィンドウが開きます。

ページトップ このページTopへ