受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

学校説明会レポート

函館ラ・サール中学校

2024年5月22日(水)

50人部屋で、将来のためのコミュニケ―ション力を身につける

 函館ラ・サール学園は、世界約80か国におよそ1100の学校を運営するラ・サール修道会が設立したカトリック・ミッションスクールです。1960年に高校を、1999年に中学校を開校し、ハイレベルな学習指導と全人教育に力を注いでいます。学生寮を持つ道内屈指の進学校としても知られる同校には、全国から男子生徒が集まります。生徒たちは寮生活を通して深く多様な人間関係を構築し、社会生活を豊かにするコミュニケーションスキルを培っています。

 この日の説明会には理事長代理の井上治先生が登壇しました。冒頭、井上先生は「現代の日本は学力偏重の時代から、人としてのポテンシャルや人間力が求められる時代にシフトしてきています。心身共に変化が著しい中高生時代は人間形成において大切な時期であり、この時期にどのような教育環境に身を置くかによって子どもの成長は左右されるといえるほど大きな影響を受けます。その点では、本校にはそこでの生活を経験した卒業生の評価が極めて高い寮があります」と力強く述べました。

 井上先生によると、寮の違いは学校の違いよりずっと大きいのですが、その違いを知るには、「寮生の比率」「全国区制(多様性)」「生活形態」の三つを尺度に考えるとわかりやすいとのことです。同校には日本各地から入学者が集まり、全校生徒に対する寮生の割合は約65%に上ります。なかでも東京・大阪・名古屋からの入学者は全生徒数の過半数を占め、首都圏からは毎年30人以上が入学します。また生活形態について井上先生は「三つの尺度のうち、生徒に対しての影響が最も大きい」と述べ、「本校の寮は、50人の生徒が大部屋で一緒に生活する全国で唯一の特異な寮です。そこでは、異なる地域文化を持ち、性格も考え方もさまざまな生徒たちが日常的に触れ合って暮らしています。個室や2人部屋での生活とは人間体験の濃さと広さの次元が違い、自然と幅広い視野が養われます」と続けました。半面、思春期の男子生徒が大勢で一緒に生活していれば、当然ながら毎日いろいろなことが起こります。時には生徒同士がぶつかってお互いに嫌な思いをすることもあります。しかし、井上先生は「そうした経験を通して、現代社会で求められている人間関係力やコミュニケーション能力が培われていきます」と話します。

 寮内ではオンラインゲームはもちろん、スマートフォンの使用も禁止されています。プライバシーはほとんどなく、不自由といえば不自由ですが、人間関係が希薄になりがちな今の時代には、互いの弱い面や醜い面まですべて見せ合う濃密なつき合いや、ぶつかり合いにたいへん大きな意味があります。井上先生は「どんなに科学技術が進んでも人間は人間のなかでしか生きられず、人間のなかで自分を磨いていくしかありません。寮生活のなかでは社会生活に必要な力が養われ、一生の宝となる深い友情も得られます」と語ります。また、卒業生たちは今も昔も、口をそろえて、「ラ・サールで得た最も大きなものは学力ではなく、あの寮生活での経験だ。大人になり、社会人になり、それが自分の土台になっていると実感する」と言うそうです。それを受けて、井上先生は「本校は、激動の現代を生きるための人間関係力を育む学校として全国トップの実力を誇ると自負しています」と胸を張りました。

 そして、小学校卒業と同時に親元を離れて寮生活を送ることについては、「親子とも、互いを思い合う気持ちが純化され、より絆が深まったとおっしゃる方が多いです。親は知らず知らずのうちに子に対して過保護や過干渉になってしまうことがありますが、離れて暮らせばそれを避けられるため、『親として成長できた』と話す方もいます。子どもたちは、寮生活でたくましく成長します。学校での学びだけではできない経験を通して、人生の財産も得ていくことでしょう」と語り、寮についての説明を締めくくりました。

 最後に、2025年度入試について説明がありました。毎年、1次の追加合格者は第一志望の受験生のなかから選ばれており、第一志望の場合は合格の門がかなり広くなっているそうです。また、寮生活を選択肢に入れる家庭が増えているため、第二志望者も追加合格の対象にすることを検討中です。

イメージ写真 50人との日常的触れ合いが避けられないこの環境のなかで、子どもたちのコミュニケーション力が磨かれていきます

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