受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

学校説明会レポート

横浜創英中学校

2023年6月6日(火)

「自律・対話・創造」を教育目標に据え、生徒主体の学びに挑む

 横浜創英中学校・高等学校は、1940年に創設された京浜高等女学校を前身としています。「考えて行動のできる人の育成」を建学の精神に掲げる同校では、2020年度より大規模な学校改革を推進し、中学入試の志望者数を大きく伸ばしています。

 この日のオンライン説明会の冒頭では、改革の旗手である校長の工藤勇一先生が登壇し、「きめ細やかでていねいな“面倒見の良い教育”を行ってきた本校の教育方針を、この4年で180度転換しました。社会とのリアルなつながりを持つ『実学教育』を行い、学校運営の権限を生徒に委譲して、学びの主体も生徒に変えています」と述べました。続けて、日本の若者の当事者意識の欠如と自己肯定感の低さに触れ、「手をかけすぎる日本の教育は、子どもたちの自律を奪ってしまいました。子育てとは、人の力を借りながら、自分の力で歩んでいけるように支援することです。どう手をかけるかよりも、どう手を離すかがとても重要なのです。本校では、自己決定を繰り返しながら自己肯定感を高め、自分の頭で考えられる生徒を育てます」と強調しました。

 同校では、「リーダー養成講座」(中3~高3)、「4Cスキル研修」(中2・高1)、「コラボレーションウィーク(合教科授業)」(高1・2)などの特色ある授業を用意し、「自律・対話・創造」という教育目標の実現に向けて、Plan(計画)→Do(実行)→Check(測定・評価)→Action(対策・改善)のPCDAサイクルや情報リテラシーなどの九つのスキルを培うのが狙いです。

 昨年度は、科学的な思考を重視した中高一貫の「サイエンスコース」が中学に設置されました。「本科コース」との2コース制を導入しましたが、2年後の2025年度には、本科コースに代わる「グローバルコース」を新たに立ち上げ、コースの再編を行います。工藤先生は、「本科コースでは、すでにグローバルコースのプログラムを実施しており、生徒自身が旅行会社と折衝して修学旅行の内容や日程を決める企画もスタートしました。これから、さらに本格的な改革が始まります」と熱意を込めて語りました。

 中学での具体的な学習内容については、校長補佐の山本崇雄先生が話しました。探究学習の時間では、サイエンスコースの生徒たちはみずから選んだテーマの研究を進める一方、本科コースの生徒たちは対話型の「ケーススタディ」で与えられた課題の解決に取り組みます。いずれのコースでも、日本で活躍するトップクラスの専門家による宇宙開発、データサイエンス、がん研究などの授業を中1から受講できます。

 山本先生は、このほかにも自律型の学びの導入例として英語科の授業を挙げました。「教員がテキストを使って教えるクラス、生徒同士が対話をしながら学習するクラス、AI教材などを使って自由に学ぶクラス、メディアセンター(図書館)で、企業と提携して行う質の高い英会話レッスンを受けるクラスなどを設けています。どれを選ぶかは生徒に任されています」とのことです。

 副校長の本間朋弘先生からは、新カリキュラムの2本の柱についての説明がありました。一つ目は「自由選択制の拡大」です。生徒の主体性を育てるために、必修科目は最小限にして、大半の科目を自由選択制にします。「一人ひとりの興味・関心や進路の方向性は違うので、全校生徒の数だけカリキュラムができるでしょう。高大連携も進めており、大学の講義を受けて単位を修得すれば、それを高校の卒業単位として認める方針です。大学の講義で必要な単位をすべてカバーできれば、高3では一度も登校せずに卒業できるシステムも考えています」と本間先生は話します。

 二つ目は「学年制を柔軟に考える」ことです。可能な限り教科や学年の枠を取り払い、授業によっては飛び級などもできるようなイメージで、すべての教科で生徒主体の授業を進めていきます。

 2025年度からのカリキュラムの詳細は、2024年の春に発表予定とのことです。なお、来年度の中1に対しては、前倒しで新カリキュラムが実施されることも伝えられました。

イメージ写真 「コラボレーションウィーク」には、教科・科目の異なる教員がペアを組んで合教科の講座を開講します。生徒たちは1週間のうちに、各講座で与えられた多彩なミッションに取り組みます

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