受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

School Now

(「23年9月号」より転載/23年8月公開)

江戸川女子
中学校・高等学校

企業の課題に生徒たちがチームでチャレンジ
みずから気づくことで社会とのつながりを知る

 創立から90年以上の歴史を持つ江戸川女子中学校・高等学校は、「教養ある堅実な女性の育成」を建学の精神に掲げ、時代に合わせた学校改革に取り組んでいます。今回は高校の情報科の授業「企業インターンワーク」にフォーカスし、企業の課題に取り組む意義や、社会とのつながりのなかで生徒たちが身につけるべき力などについて、担当の不破芳宣先生にお話を聞きました。

企業とのやりとりを通して
「気づかせる」ことを重視

情報科主任
不破 芳宣先生

 2015年度から高校の情報科に導入された「企業インターンワーク」は、日本を代表する企業から出された課題に生徒たちが取り組む授業プログラムです。初年度からこの授業を担当する不破芳宣先生は、基本的に「教える」のではなく「気づかせる」ことを重視していると言います。「この授業では、実際に企業で働く大人たちが直面している課題に、高校生がチームで取り組み、新しい提案を行います。解決策や企画案を導き出していきますが、決まった答えがあるわけではありません。プレゼンテーションを通して、企業の方々から直接コメントをフィードバックしていただくので、わたしが教えるというよりも、企業の方々とのやりとりのなかから答えを探していきます。“とにかく自分たちでやってごらん”というスタンスで指導しています」と説明します。

 授業では、まず毎年6月にチームを編成し、課題に取り組む企業を決定します。そして、各チームは3月の最終プレゼンに向けて、さまざまな指令をこなしていきます。この日の授業は、各チームの自己紹介動画の撮影でした。1チーム4〜5名で動画の時間は約2分。内容はメンバー紹介(趣味・部活動・その企業の好きな商品)、簡単な企業紹介、プロジェクトへの意気込みなどです。生徒たちはスライドを投影しながらカメラに向かってそれぞれの思いを伝えました。この動画を視聴した企業の方から、夏休み中に感想と「指令①」が送られてくるとのことです。ここでは商品の認知度などについての調査がメインで、秋にミニプレゼンを行います。それに対して企業から「指令②」が出され、生徒たちは実際に自分たちでインタビューなどのフィールドワークをして、3月に最終プレゼンを行うというプロセスで進みます。

商品イメージだけで企業をとらえず
さまざまな仕事があることを知る

 「答えがあるわけではない」ということに対して、生徒たちには抵抗感があり、「これはどういう提案にしたほうがいいですか」「過去の先輩たちはどのようにしていましたか」と、回答例を求める傾向があると不破先生は言います。「アドバイスしてあげたいときもありますが、まずはぐっと我慢し、プレゼンテーションが終わった時点で『こういう方法もあったね』『これに気づけたかな』と指摘をします。自分たちの動画を見直してもらうようにすると、下を向いていたり、まったく声が聞こえていなかったりすることに気づいてくれます」

 また、生徒たちは、企業名を聞いて〇〇製菓のアイスクリーム、〇〇製薬の清涼飲料など、商品だけをイメージしがちです。しかし、お菓子のメーカーで、この授業の担当部署が広報部ではなく人事部という場合、たとえば企業が開催するインターンワークの企画提案を求める指令もあります。「お菓子の会社だからお菓子の新商品開発に関する提案だろう」と思い込んでいた生徒は、その指令に戸惑ってしまいます。不破先生は、「進路選択においても、企業にはいろいろな部署・仕事があることを知ってほしいと思います。理系であれば、研究職の仕事があり、メーカーの開発・製造部門を担う役割もあります」と話します。

各チームの自己紹介動画を撮影。この動画は企業の担当者に視聴してもらいます。最初のコンタクトとなるので、各チームとも緊張気味です

ほかのチームの自己紹介を見て、自分たちの良かった点、改善すべき点などを話し合います。細かい指摘はせず、「気づかせる」ことを重視する不破先生

企業からの指摘を踏まえて気づき
考える経験を積み重ねる

昨年度、コンビニエンスストアに提案した企画案が店舗で採用。企画が実現するまでに、多くの部署・人がかかわることを、生徒たちは知りました

 昨年度は、あるチームが大手コンビニエンスストアへの企画で賞を獲得し、提案した「容器包装削減のためのマイ容器持参企画」が、江戸川区内の3店舗において期間限定で実施されました。

 不破先生によると、生徒の成長には二つのパターンがあるとのことです。一つは生徒がみずから気づくパターンで、アドバイスがなくても徐々に自信をつけていくタイプです。最初は中学生の研究発表レベルでも、調査を重ね知識が増えていくと堂々と話せるようになり、目線も上がってきます。もう一つは、初期段階から高いポテンシャルを発揮するパターンで、コンビニエンスストアに提案したチームがこれに当たります。大きな声で話す、目線を上げるといったプレゼンテーションの小手先の力ではなく、中身を考えて提案しているところがこのチームの特徴です。「『きっとこの企業はこういうことを考えているだろうから、これを念頭に置いて話そう』『これはすでに知っていて取り組んでいるだろうから、アプローチを変えた提案をしたらどうだろうか』など、最初から会社の中に入り込み、文字どおり一員となって考えることができていました」と不破先生は言います。

 生徒たちは、コンビニエンスストアの店舗でのアルバイトの仕事はイメージできますが、本社で働いている正社員はどのような仕事をしているのだろうかと疑問を抱きます。企業としては、そこを知ってほしいという思いもあり、高校生の発想力に期待しています。不破先生もこう話します。「実現不可能だろうというアイデアも出てきますが、無理だとあきらめるのではなく、できる限り具体化して突き詰めていくことに意義があります。よくある商品開発のアイデアとして、『おまけをつける』『パッケージを工夫して仕掛けを加える』などの例があります。大人から見るとそれらは『プラスチックごみの削減になっていない』『そんなに味の種類があったら製造する側が大変』などの問題が見えてきます。そうした点を企業の方に指摘していただくことで、生徒たちはどのように改善していくかを考えます。考えて気づくという経験を積み重ねていくと、提案がより良いものになっていきます。タブーなしで議論ができるのも高校生の強みです」

 最後に不破先生は、受験生に向けて次のようなメッセージを送ってくれました。「教師になりたい、医師になりたいなど、明確な目標を持つことは大切です。しかし、入学前にそうした目標がなくても大丈夫。この授業以外にも、いろいろなプログラム、工夫された授業があるので、江戸川女子に入ってみて気づくこと、見つかるものがきっとあります」

企業インターンワークについての卒業生インタビュー
https://youtu.be/lWN5EDlbWvo 別ウィンドウが開きます。

《学校のプロフィール》

江戸川女子中学校・高等学校

所在地
 〒133-8552 東京都江戸川区東小岩5-22-1
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