受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

最新中学入試情報

2024年度中学受験  サピックス小学部第29期生/親子で歩んだ 受験の軌跡

進学校 渋谷教育学園幕張中学校

飛躍をもたらしてくれた敗北

S.Nさん お子さんの名前 Nさん

 かねてから子供には中高一貫教育の中で大学受験を目指せる環境を作ってやりたいと思っていました。私自身が地方の公立高校から大学受験をした中で、急ピッチすぎる高校3年間に対する忸怩たる思いがあったからです。
 娘は新4年生からサピックスに入室しました。仲間と関わりながら知的なトレーニングを受ける環境そのものが新鮮で楽しかったようで、コツコツと勉強を続けて成績も安定的に推移しました。一方で、当初から偏差値や志望校に対する執着はさほどなく、ややもすればなんとなく受け身で過ごしているようなところがありました。そうした背景もあってか、実力値としての学力に比して試験で○をもらうことへの執着に乏しく、頻発する不用意なミスが気になっていました。ただ、結局のところ克服できずにいました。
 年が明けて、娘は渋幕一次に臨みましたが、結果としては敗北となりました。かねてから算数勝負を想定し、そこにリソースを傾注し、なおかつ本番では解き切れると思われたにもかかわらず、不用意なミスを重ねてしまったことが要因でした。
 娘はその夜に自己採点をしてミスの存在に気づいたようでした。
 取り返しのつかない本番で、生命線と目して対策してきた算数において、かねてから指摘され続けた脇の甘さを露呈してしまい、人生の大事な機会を逸してしまいそうな状況。
 いつもなら「しまった、しょうがない」で通り過ぎてきた局面でしたが、娘はその時「悔やんでも悔やみきれない」という言葉を初めて使いました。遅きに失しましたが、受験生活を通して結果に対する執着を強く見せた初めての瞬間でした。
 我が家の受験のハイライトはそこからの1週間にあったように思います。とにかく算数において、制限時間を意識しながら「解くと決めた問題を間違いなく刈り取る」ことについて、徹底して向き合いました。また自宅近くのホテルを借りて、終日そこで没頭する環境を作りました。朝から晩まで淡々と向き合い続ける娘には、アスリートの風情すら漂っていました。
 1週間の挽回策が奏功したのか、渋幕二次では合格を手にすることができました。
 算数に関しては、問題の巡り合わせもあったかもしれませんが、そのほとんどを正解することができました。合格だけに意味があるものではないにしても、最終局面で娘が自ら勝ち取った結果はここまでの家族の苦難を癒してくれるに十分なものでした。そして、一次で落ちたことにも意味があったのではないかと思えるほど、この1週間という時間に肯定的な気持ちになることができました。親としても、別人格としての子供が臨む勝負事に対して、二人三脚でここまで情熱を燃やす機会は、今後もうないことなのかもしれないと思います。
 このような稀有な機会を与えてくれた娘と、その道程を支えていただいたサピックスの先生方に深く感謝して体験記を結びたいと思います。
 ありがとうございました。

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