受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

自慢の授業

本郷中学校・高等学校

「数学」

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代々受け継がれる「数学合同授業」
先輩の姿から学ぶことが伝統に

 「文武両道」「自学自習」「生活習慣の確立」という三つの教育方針を掲げる本郷中学校・高等学校。都心にありながら充実した施設を持ち、部活動に力を入れる一方、学習面でも独自の取り組みを実践して、手厚いサポートを行っています。今回は、中2と中1の生徒がペアになって進行する「数学合同授業」の様子をお伝えします。また、数学科教員の野原一将先生に、この授業の目的などを伺いました。

初めての定期考査を迎える中1に
中2が問題の解説や学習法をアドバイス

 今や同校の「名物」ともいえる中1と中2の数学合同授業。年に4~5回、数学の授業中に実施され、中2と中1の生徒がペアになって、先輩が後輩に問題の解説や学習法のアドバイスなどを行うものです。中2と中1の二つの教室を使い、出席番号で半分の人数に分けて、それぞれ同じ授業を展開します。一つの教室に一人ずつ教員がつきますが、基本的には様子を見守るのみで、中2の生徒が自分で進行する形式になっています。

 この日は年度が変わって1回目の合同授業。もちろん中1は初めての経験で、中2も教える立場として迎えるのは初めてです。例年、この時期の合同授業は、「初めての定期考査に向けて」というテーマで行われます。中2の生徒には授業の約2週間前に、当日の流れや注意点などの資料と昨年の中1の中間考査の問題が配られ、それを基に事前準備を進めるように教員が指示します。

 資料のなかのワークシートには、中1の生徒から質問されるであろう項目が記されています。「定期考査とは何か」「良い点数を取るためにどのように家庭学習を進めたらよいか」などの質問に対して、中2の生徒はその回答を自分なりにあらかじめ考えておきます。一方、中1の生徒は、昨年の中間考査の問題をあらかじめ解いて、どこが理解できていないのかを把握しておきます。

 授業が始まると、冒頭で教員が趣旨を説明した後、先輩と後輩との“やり取り”が行われます。進め方は先輩に任されているので、初めに後輩が解けなかった問題の解説をしたり、ワークシートにある「定期考査とは何か」から説明したり、「最近部活はどう?」などと話しやすい話題から入ったりとさまざまです。

 教室内には会話が飛び交い、身を乗り出して説明したり、図を描いて見せながら解説したりする先輩の姿が見られます。先輩の解説を聞いた後に、後輩が再度問題を解いてみると、「あー、そういうことか」と納得した様子。問題を解くなど書く作業の時間と、会話をする時間とのバランスに気をつけながら進めていきます。基本的には中2と中1の2人1組で行いますが、ペア二つ(一部は三つ)の班が組まれ、班ごとに机を合わせて座っているため、解説するのに不安がある部分は、同じ班の中2の生徒がサポートできるようにしています。実際に、中2の生徒同士で確認しながら進めている光景もありました。

 だいたい30分が経過したところで、まとめの時間に移ります。合同授業の感想をワークシートに記入し、自己評価をタブレットのフォームに入力して終了となりました。今年度最初の合同授業は緊張感もありましたが、やり取りが進行していくと和やかな雰囲気になり、満足そうな表情で終えた生徒が多かったように感じました。

先輩が後輩に直接伝え、自学自習を導く
授業における縦のつながりも貴重なものに

5 数学科の野原先生。中2の担任として、今年度の合同授業の企画にも携わっています。「毎年少しずつ改善しながら進化させて、伝統をつないでいきたいと思っています」

 「自学自習の習慣を生徒主体で導きたい」という理由で、数学の合同授業を始めました。「教員ももちろんアドバイスをしますが、生徒自身が後輩のために準備して、授業で直接伝えることが、自学自習の姿勢によりつながるのではないかと思いました」と野原先生は言います。

 中2の生徒は自分が教える立場になると、きちんと理解していなくてはならないので、緊張感を持って学習に取り組むようになります。中1の生徒は、「こんなふうに教えてもらってうれしかった」と先輩にあこがれを抱き、「来年は自分がやれるようにならなくては」という自覚が芽生えます。先輩の姿を見て学ぶことが、同校の伝統として代々受け継がれているのです。

 ほかにも、合同授業の効果はさまざまな部分に波及しています。野原先生はこう説明します。「中2が中1のために準備することは、自分のためにもなっているのです。中1の内容を振り返ると、『昨年できなかったことがこんなにできるようになった』と自分の成長を感じられて、モチベーションが高まります。今回の中1の中間考査の範囲である平面図形は、中2で学ぶ相似と関連しているので、現在の学習につながっていることが理解できます。また、部活動だけでなく、授業においても先輩と後輩とのつながりが形成され、やり取りを通じてコミュニケーション能力を養うこともできます」

 中1の生徒からは、「先輩が優しく接してくれて、説明もわかりやすかった」「学校生活の質問にも答えてもらって、本郷について知ることができた」「中間考査までどのように過ごしたらよいか目安がついた」などの感想が寄せられました。これに対して中2は、「事前準備はしたものの、相手が理解できるような説明をするのが難しかった」「時間配分への配慮ができなかった」などと自分に厳しめの評価が目立ちますが、この反省を次回以降の合同授業に生かし、さらに充実した時間にできるように努めていきます。2学期には「合同の証明」を学ぶので、合同授業では記述の仕方をテーマに取り上げ、中2が中1の答案を添削する機会も設けられるそうです。

 最後に、野原先生は受験生に次のようなメッセージを送りました。「中学受験の学習では、基礎固めを大切にしてください。ベースがきちんとできていれば、入学後に本校でしっかり考える経験を積んで、好きなものを伸ばしていくことができます。みずから学びたい、成長したいという皆さんをお待ちしています」

出席番号で組まれた中1と中2のペアが、今年度初めての合同授業に臨みます。時間を有効に使えるように、どのペアも真剣な表情で話しています

中2の先輩が後輩の隣に移動して、書き込みながら熱心に問題を解説しています

時には同じ班の中2の生徒が協力して教える姿も見られます

4 問題に向き合う中1の後輩を、先輩が温かいまなざしで見守っています

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