受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

この人に聞く


総合型選抜や海外大学に向けて
“セルフブランディング”を重視

イメージ01中2技術家庭科(情報分野)でのロボット製作

広野 中3の英語チャレンジクラスの生徒が、そのままこのILAクラスに進むというイメージですか。

西川 はい。英語チャレンジクラスのなかでも、特にアドバンストの生徒たちが進級することを想定しています。まず、高1の段階では、国内外問わず、さまざまな進路選択が可能であることを提示していきます。そして、高2~3にかけて、国内大学の総合型選抜や海外大学など、具体的に目標を絞っていくのです。ここ2年連続で、コロンビア大学やノックスカレッジといった海外のトップ大学に卒業生が進学していますので、それに続く生徒を育てるようなクラスにしていきたいと考えています。

鎗田 英語の能力が高く、なおかつどの科目でもまんべんなく得点できるというバランス型の生徒は、スタンダードクラスで難関大学をめざすという方法もあるでしょう。その点、このILAクラスが想定している生徒像というのは、一般入試で必要とされる知識の習得に苦手意識を持つ帰国生や、抜きんでた英語力を武器に自己実現をかなえたい生徒たちです。「英語が得意」というアドバンテージを最大限に生かして、大学進学をめざすクラスといえます。

髙瀬 理想とするゴールは、英検®1級またはTOEFL iBT®のスコア100を超える生徒を育てることです。それに対応できるレベルの子たちが順調に育っていますので、「彼女たちが高校に進学する際に、十分に力を発揮できる場を設けたい」という思いが、このクラスの創設につながりました。

広野 初めからビジョンありきではなく、現在の中学生が高校段階になったらどのぐらいまで伸びるかを予測して設計されているので、教育効果が高まりそうですね。そのほかの特色についても教えてください。

イメージ02中1・2のサイエンティストの時間では、自然科学を通して研究の仕方を学びます

髙瀬 ILAクラスでは、アントレプレナーシップの養成に力を入れたいと考えています。といっても、めざしているのは会社を起業することではなく、世の中の課題を見つけ、解決に導く人材を育てることです。そこで、毎週金曜の6・7時間目を使って、英語によるアントレプレナーシップの授業を実施します。マサチューセッツ工科大学で教えた経験を持つアメリカ人教授を招請し、アントレプレナーシップ教育をわかりやすくかみ砕いた「24ステップ」と呼ばれるメソッドを参考に、社会で働くとはどういうことなのかを学んでいく予定です。

広野 起業家精神は、現代の日本人に欠けている部分ですから、非常に画期的な取り組みといえますね。

鎗田 そのアメリカ人教授は、海外の大学生に教えていた経験があるだけでなく、現在は国内の情報系大学院に勤めており、有名企業とのつながりもあります。「ハッカソン」と呼ばれるプレゼンテーション大会やビジネスコンテストにも慣れているので、それらの知見を中高生向けに落とし込んだ教育の展開を期待しています。

髙瀬 ここでキーワードとなるのは、“セルフブランディング”です。つまり、「自分は何者で、他者や社会のために何ができるのか」を明確にするということです。そのためには、学力以外に誇れるものを見つける必要があります。それこそ、プレゼン大会やビジネスコンテストへの出場によって、自分の取り組みが社会からどう評価されるのかを認識できる機会をたくさん提供したいと思っています。こうした経験は、国内大学の総合型選抜入試でも、海外大学受験でも、大きなアピールポイントになることでしょう。

広野 通常の教科学習についてはどうお考えですか。

西川 たとえば数学では、英語で教科学習を行う「CLIL」と呼ばれる形式を導入する予定です。現在、アメリカの大学進学適性試験であるSATの指導にもたけた理系の講師を採用し、中3を対象にトライアル授業を実施します。これがうまくいけば、ILAクラスだけではなく、中1のスタンダードクラスからCLILを導入できないか検討しているところです。

初学者でも安心して力を伸ばせる
五つのグレード別の英語授業

イメージ03左から、教頭 鎗田謙一先生、サピックス小学部 広野雅明先生、校長 西川史子先生、グローバル教育部部長 髙瀬聡伸先生

広野 国際交流についてはいかがですか。

西川 これまで、英語チャレンジクラスの生徒を対象に、2週間のイギリス研修を春休みに実施していましたが、これを夏休みに行う1週間のアメリカ研修に変更します。トップ大学の寮をお借りして、朝9時から夜8時まで、教授や大学生とのディスカッションをベースとした授業を体験する予定です。

広野 なかなか骨のあるプログラムですね。

髙瀬 はい。「帰国生が満足する海外研修とは何か」を考えながら、研修内容を細かく調整しています。そのほか、英語チャレンジクラスのアドバンストでは、国際バカロレア(IB)認定校であるオキナワインターナショナルスクールと提携して、夏休みに約1週間のIB体験を行います。そして、高1のターム留学では、すでにあるオーストラリアに加えて、このオキナワインターナショナルスクールも行き先の一つとして選択できるようになります。経済的な理由から、海外でのターム留学をあきらめざるを得ない生徒も、沖縄で本格的なIB教育に触れて、海外大学への意識を高めてほしいと思っています。

広野 さて、中学入学段階では、小学校の授業でしか英語に触れてこなかったお子さんもいらっしゃると思います。そうした初学者に対するフォローについても教えてください。

西川 ここ数年で帰国生が増えているとはいえ、入学者全体の約7割は初学者または英検®4級レベルの子どもたちです。そうした生徒に向けては、ネイティブ教員と日本人教員とのチームティーチングから始め、「英語はコミュニケーションを図るうえで便利なものなんだ」「楽しいものなんだ」と感じてもらうことを大事にしています。小学校での英語しか経験がなくても、基礎からわかりやすく教えていきますので、どうか安心して入学していただきたいですね。

鎗田 本校の英語では、習熟度に合わせてGⅠからGⅤまでの五つのグレード別に授業を実施しています。先述のような初学者はGⅠに当たり、GVと呼ばれる帰国生中心のトップ層に向けては、すべての授業をネイティブ教員が担当します。入学時はGⅠからのスタートでも、周囲の英語が堪能な生徒に刺激を受け、どんどんグレードを上げていく生徒もいます。

髙瀬 小学校で英語が教科化されたことによって、初学者といっても、その力は以前より底上げされてきたように感じます。しかし、初学者か上級者かにかかわらず、本校が英語教育で重視しているのは論理力です。日本はハイコンテクスト(ことばよりも文脈に頼る)文化なので、根底には「口に出さなくてもわかってくれるはず」という意識があります。そこにいくら英語をインストールしたところで、国際的な場で手を挙げたり、発言したりすることへの苦手意識は払拭できません。それを克服するには、文法や発音の正しさはもとより、まずは情報を正しく読み取り、簡潔に要約できる、ロジカルな力を重点的に養成していきたいと思っています。

イメージ04イングリッシュアイランド(EI)では、誰でもネイティブ教員とのコミュニケーションを楽しめます。中1~3のイングリッシュアイランドステイ(EIS)の授業でもこの施設を活用しています

広野 最後に、受験生と保護者の方に向けてメッセージをお願いします。

鎗田 帰国生に本校を選んでいただけるようになって喜ばしい一方、あくまでわたしたちは、日本人としてのアイデンティティーを持ったうえで、日本を基盤にして活躍する人材を育てていきたいと考えています。日本の価値観や文化を尊重しながら、国際的な活躍をめざす受験生にぜひ来ていただきたいですね。

髙瀬 本校は、生徒の心理的安全性を大切にしている学校です。授業で発言するときに「間違っていいんだ」「否定されないんだ」と確信が持てるような、温かい信頼関係の醸成を心がけています。受験生の皆さんにも安心して入学してもらい、さまざまな授業で自分の良さを伸ばしてほしいですね。

西川 いろいろな生徒が集まってくる学校ですから、常に受容力のある教育を行っていきたいと思っています。説明会で保護者の方とお会いすると、「うちの子は引っ込み思案なので、そんな取り組みについていけるかどうか不安です」とおっしゃる方が多くいらっしゃいます。しかし、機会を与えれば、お子さんは必ず変わりますし、どの子も保護者の方が想像している以上の力を秘めているものです。どうか、お子さんの可能性を信じて、チャレンジを応援してあげてほしいと思います。

※英検®は、公益財団法人 日本英語検定協会の登録商標です。

外観写真1
山脇学園中学校・高等学校

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オープンキャンパス(要予約)
08月26日(土)

入試対策説明会&校内見学会(要予約)6年生対象
 10月14日(土)、11月04日(土)
 12月16日(土)、01月13日(土)

学校説明会&校内自由見学(要予約)5年生以下対象
11月04日(土)、12月16日(土)、01月13日(土)

山脇祭(文化祭)
09月16日(土)、17日(日)

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23年8月号 この人に聞く
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