受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

子育てインタビュー

豊かな感性と生き抜く力を育むために

デジタル偏重の時代だからこそ
“親子旅”で多様性に触れる体験を

 「アクティビティー」「自然体験」「異文化体験」のうち二つ以上の要素で構成される、「アドベンチャーツーリズム」が話題を集めています。離れた土地の自然や文化を知る体験は、大人のみならず子どもの人間形成にも大きく影響します。そこに着目したのが、株式会社刀が提案する地域密着型の“親子旅”です。開発の経緯や今後の展望について、ツアーを運営する株式会社沖縄アドベンチャートラベル・代表取締役の立見信之さんとプロジェクト担当の三川裕一郎さんに、SAPIX YOZEMI GROUPの髙宮共同代表がお話を伺いました。

幼少期や大学時代の“旅”が
今につながる原体験に

髙宮 この親子旅ということばから頭に浮かんだのが、人類学者の長谷川眞理子先生の研究です。特に行き先は決めていないけれど、「よし、今日はどこかに出掛けよう」と衝動的な行動を取る親のもとで育った子どもは、総じて失敗を恐れず、リーダーシップを発揮する傾向が高いのだそうです。実際にそういうご経験はおありですか。

三川 まさしく、父がそうでした。予定を立てずに行動するのが好きなタイプです。そのおかげで、幼少期から旅行にはよく連れていってもらいましたが、特に思い出に残っているのが伊豆の民宿に泊まったときのことです。その民宿には、自分と同じくらいの年の子どもがいたのですが、一緒に遊びながら、「この子は自分と違う価値観で生きているなあ」と、子ども心に感じることがありました。その経験は、「自分が生きている世界がすべてではない」という大切なことを教えてくれたように思います。

髙宮 時間に追われる都市の生活から離れて、地方に住む同年代の子どもと触れ合ったことが、多様性を知る貴重な原体験になったというわけですね。

 ところで、三川さんはサピックス小学部の卒業生だと伺いました。当時を振り返って、何か思い出に残っていることはありますか。

三川 先ほど、「マーケティングに必要なのは表層的なニーズを拾うことではなく、さらに深掘りをすること」とお話ししましたが、サピックスで培ったものも、まさしく問題を深掘りする姿勢です。単に知識を習得しただけではなく、「なぜそういう答えになるのか」を徹底的に考える習慣を身につけることができたと思っています。

髙宮 その後は開成中高を経て東京大学に進学されていますね。学生時代のご経験のなかで、今の自分に生きていると思えるものはありますか。

三川 いちばん思い出深いのは、大学時代にスキージャンプに没頭したことです。スキージャンプは、競技環境が限られているため、北海道・長野県・新潟県などに数週間にわたって泊まり込んで練習するのが一般的です。練習の空き時間に、地元の人々と交流を重ねるにつれ、その土地の文化や伝統に魅了されていきました。その経験から「地方から日本を活性化したい」という気持ちが芽生え、大手広告代理店勤務を経て、現在に至っています。

親子旅で磨く「生き抜く力」
どんな相手でも許容できる人に

髙宮 この親子旅を通じて、子どもたちに育んでほしい力、期待していることは何ですか。

三川 手や足を動かすことでしか得られない、体験の尊さを知ってほしいですね。現代はデジタル偏重の時代だからこそ、実体験の価値がより高まっていると思います。手で魚をすくい上げる感覚、風を感じながら帆船で海上を進む感覚は、PCやスマートフォンの画面では味わえません。それらを実際に経験することが、豊かな心やみずみずしい感性を育み、バランスのとれた人間形成に良い影響を与えるのではないかと思います。

立見 ツアー名にもあるとおり、「生き抜く力」です。わたしはパラグアイやエジプトで野生児のように育った、いわゆる帰国生ですが、その目線から自分の子どもを見ると、「ずいぶん守られた世界で生きているな」と感じることがあります。特に、ご家庭が教育熱心であればあるほど、子どもの周りには、似たような学力、似たような経済感覚の友人が集まるものです。しかし、そうした均質的な世界に慣れてしまうと、異なる価値観や文化を持つ人々と対峙したときに、相手を理解し、許容することがなかなか難しくなるのではないでしょうか。かといって、いきなり「ウズベキスタンで生活してみよう」というのは非現実的です。そこで、3~4日というコンパクトな日程で、さまざまな文化が交差する沖縄という土地の生活を知ることは、子どもたちの多様性への理解を促し、「生き抜く力」を育んでくれるはずだと確信しています。

髙宮 先日、東大・執行部の方々とお話しする機会があったのですが、東大もまた、多様性の担保に頭を悩ませています。地方から優秀な学生を集めたいが、試験という公正なふるいにかけると、幼少期から訓練されている都市の学生がどうしても勝ってしまう、と。東大が直面しているのと同じ課題に、貴社が旅行というアプローチから取り組んでいらっしゃるのは、なかなか興味深いお話です。最後に、読者へのメッセージをお願いします。

立見 子どもが次世代を生きるうえで「どんなスキルが必要か」を真剣に考えていらっしゃるご家庭にこそ、この旅行の価値をご理解いただけるのではないかと思います。今後は、これまで以上に質の高い体験価値を提供しながら、日本全体を活気づけていけたらうれしいですね。

三川 今後は沖縄島北部以外にも、さまざまな地域でアドベンチャーツーリズムを展開していきたいと考えています。地方には、まだ知られていない文化や魅力がたくさん埋もれています。それらと消費者をつなげられるよう、今後もますます活動範囲を広げていきたいと思います。

髙宮 地方の良さを教育的価値に置き換えて提供してくださる貴社の試みは、とても意義あるものだと感じます。本日はありがとうございました。

世界の見え方が変わる“海ツアー”2種類の予約を開始」

 株式会社沖縄アドベンチャートラベルでは、夏休みの特別企画として、「『生きる力』をみがく親子旅 in 沖縄やんばるの海(7・8月実施)」および「サンゴの海、うみんちゅの祈り(9・10月実施)」の予約を公式WEBサイトで受け付けています。世界自然遺産“やんばるの森”に代表される沖縄の豊かな自然に囲まれながら、現地の人々との交流を通して、伝統的な生活様式や文化、多様な生き方に触れることのできるツアーになっています。
 詳細は下記URLおよびメールアドレスまでお問い合わせください。

ツアー詳細:予約サイト

www.okinawa-adventures.com/

お問い合わせ

info@okinawa-adventures.com

24年7月号 子育てインタビュー:
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