受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

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 高学年になると、難度が上がっていく算数に苦戦して、がんばっているのに成績が伸びないというお子さんも多いのではないでしょうか。改善するためには、学習の重点の置き方や、実戦を意識したゴール設定が重要になります。家庭学習の際にどのようなことに気をつけて取り組めばよいのか、上本町校校舎責任者にお聞きしました。

第171回「がんばっても算数の成績が
伸びないときの取り組み方」
回答者/上本町校校舎責任者

「わかった」はゴールにあらず
「できた」の積み重ねが実戦力に

 「算数の勉強をがんばっているのですが、成績が伸びません。どうすればよいでしょうか」という相談を、毎年たくさん受けます。確かに一生懸命がんばっているのですが、力を入れるベクトルが少しずれているのではないかと感じることがあります。難度が上がる5・6年生の時点で取り組み方がかみ合わないと、成績が伴わないので、まずは努力の方向性を見直してみることが必要です。
 第一に、授業と家庭学習のバランスを再確認してほしいと思います。たとえば、算数が得意なお父さんが家で付きっきりで教えてくれるご家庭があります。しっかりと見ていただけるのはありがたいのですが、そうすると、子どもはどうしても「家でお父さんに聞けばいい」となりがちで、授業に集中できていないことがあります。逆に、授業の集中度は高くても、家での復習が不十分な場合は、処理力や処理スピードが上がらず、テストでなかなか思うような結果が出ないという状況になることもあります。つまり、授業と家庭学習の両輪をバランスよく回していくことがとても大切です。根幹にあるのは授業で、そこからどのように復習するかを意識してください。
 家庭学習のゴール設定も重要です。授業の復習をして、先生が解説したことを理解していても、「わかった」という段階で止めてしまっているお子さんが多くいます。「わかった」ではなく、「できた」というところをゴール地点に設定すべきなのです。「できた」というのは、「一発正解」ができる力。習ったことを自分の武器として再現性のあるものにできると、数値や設問の視点が多少変わっても、十分に対応できる力が身についていきます。このゴール設定をしておかないと、時間をかけて勉強してもテスト結果につながりづらく、モチベーションの維持も難しくなります。

自分の弱点と×の原因の分析が重要
解決には講師とのコミュニケーションを

 テストの直しについても「直して終わり」ではなく、その過程を必ず分析してほしいと思います。自分の解き方を見返して、なぜできなかったのかを分析すると、そこに改善のヒントがあるはずです。たとえば、文章題の問題で、最後のたし算で間違えたものを、直しでもう一度はじめから式をていねいに書いていくことに、それほど効果がないことは想像に難くないでしょう。
 家庭学習では、時間の縛りもなく、緊張感のない状態で1問に向き合う余裕がありますが、テストは、たとえば50分で大問を7題解くなど、問題一つひとつに掛かり切ることができません。自宅ではていねいに解いているのに、テストだと式を書かずに筆算だけを雑に書いてしまって、ミスが発生することもあります。こうした原因を分析する癖をつけることが重要です。
 「わかっていない単元がわかっていない」という状況も、思わぬ落とし穴になります。5年生の後期になると、速さの問題で「比」を使って解くことがあります。ここでつまずいたときに、わかっていないのが「比」なのか、旅人算(速さの和・差)を使う関係性なのか、まずはそこを突き止めてから取り組むことが大切です。点数を上げるためのつぼを勘違いして、「この問題を間違えたから、類題を10問やろう」という対策をしても、その手前の段階の土台がないので、効果が得られないということもあります。
 実はいちばん多いのが、計算力が足りていないというお子さんです。そこで、地道にやっておくべきなのが「基礎力トレーニング」、4・5年生のテキストの後ろについている「計算力コンテスト」です。計算力の欠如は、「わかった」が「できた」になりきらない障壁の最たる例として挙げられます。
 算数に苦戦するのは、いろいろな要因が組み合わさっているといえます。解決するためには、やはり講師とのコミュニケーションが大切だと思います。相談すれば、どこに原因があるのかが明らかになるでしょう。そして、努力の方向性を修正すれば、同じ勉強量でも十分成績は伸びます。受験勉強は、誰もが山あり谷ありを経験するものです。山積する課題に優先順位をつけて、できることからこつこつと積み重ねていくことが、目標達成につながるいちばんの近道になります。苦しいときは迷わずわたしたちに相談してください。一緒にがんばりましょう。

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